2015年7月1日、日本マイクロソフトとしては約7年ぶりとなる新社長に、副社長だった平野拓也氏が就任した。2005年のマイクロソフト入社後、エンタープライズ担当、中央・東ヨーロッパ ゼネラル・マネージャーを経て社長に抜擢された。Windows 10の無料アップグレードなど、変革期にあるマイクロソフトのトップとして、どのように社を牽引していくのか、その意気込みと決意を語ってもらった。(聞き手は杉田悟=IT Leaders編集部)
――マイクロソフトでは、2016年度の3つの重点戦略を掲げていますが、改めて各戦略について考え方と取り組みを教えて下さい。
マイクロソフトは、2016年度の重点戦略として「Windows 10+デバイス」「インテリジェントクラウド」「プロダクティビティとビジネスプロセス」の3つを挙げています。
まず、「Windows 10+デバイス」ですが、ご存じのように新OSであるWindows 10について、初の無料アップグレードを行っています。Windows 10は、「ユニバーサルプラットフォーム」を打ち出しており、ひとつの環境で開発したプログラムが、スマートフォンからタブレット、PC、そして2015年9月に発表した84インチの大画面コラボレーションデバイス「Surface Hub」でも実行できるようになりました。
現在、様々な種類のデバイスが登場しており、企業での活用が進んでいますが、デバイスごとにアプリケーションを作り直すというのは効率的ではありません。使いやすさ、運用のしやすさ、互換性、そしてセキュリティまで考えた末、必然的にユニバーサルプラットフォームにたどりつきました。
――ユニバーサルプラットフォームが、開発者にとってメリットがあるのはわかるのですが、ユーザーにとってのメリットは。
開発者へのメリットが、結果的にはユーザー企業にもメリットをもたらすと考えています。例えばメンテナンスが行いやすくなる、コストが削減される、生産性が向上するといった開発者にとってのメリットが、そのままユーザーにもメリットとして享受されます。その点を考えても、ユニバーサルプラットフォームを提供できることは、マイクロソフトにとっての大きなアドバンテージといえるでしょう。
――Windows 10の発表以降、法人向けWindows Phoneの動向に注目が集まっていますが。
今後スマートフォンだけに、特別にフォーカスしていくわけではありません。マイクロソフトとしては、様々なデバイスに対して面でメッセージアウトしていくことが重要だと考えていますから。しかし、モバイルが現在のマイクロソフトにとって重要な要素であることは間違いありません。
それは、2015年8月にダイワボウ情報システムと「Windowsモバイルビジネスセンター」を設立したことにも表れています。これは、Windowsタブレット向けに設立していた「Windowsタブレット推進センター」を拡張したものです。すでにマウスコンピューター、プラスワン・マーケティング、そしてサードウェーブデジノスがSIMフリーWindows Phoneの取り扱いを発表しています。今後も複数のメーカーから、何らかの発表があるはずです。
Windows 10の発表後、「セキュリティ」「ユニバーサルプラットフォーム」というシナリオからモバイルを研究されてきたユーザーから、これまでとは全く異なるトーンで「Windows Phoneを早く欲しい」という声をいただいています。ユーザーからは共通して「やはりセキュリティに関してはマイクロソフトが安心」と言っていただいているのも心強い。
また、アプリケーションの互換性をメリットに挙げるユーザーもいます。Windows Officeには、PC、タブレット、スマートフォンで共通のインターフェースを持つという強みがありますから。特にタブレットやスマートフォンでもOfficeがネイティブで使えるということが、法人向けではインパクトが大きいようです。クラウドサービスのOffice 365もありますし。
一方、パートナーからは別の声も聞こえてきます。いわゆる「エンタープライズビジネス馴れ」という言葉があります。日本では、エンタープライズのユーザーに対しては「Webサイトを見て下さい」というサポートはあり得ません。対面でしっかりサポートするのが、エンタープライズビジネスの常識となっています。日本マイクロソフトのパートナーは、常に一緒に問題解決をするというスタンスを取ってきました。このエンタープライズビジネス馴れしたユーザーに寄り添ったサポートの姿勢が、高い評価に結びついているというのです。
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