[ザ・プロジェクト]
重厚長大企業の価値向上のカギはIoTプラットフォームに―IHI
2017年1月31日(火)佃 均(ITジャーナリスト)
IHIは「グループ経営方針」で、ITを利活用したビジネスモデルの変革を明示している。その具体策であるリモートメンテナンス共通プラットフォーム「ILIPS」(IHI group Lifecycle Partner System:アイリップス)が「攻めのIT経営銘柄2016」に選定された事由だが、執行役員・高度情報マネジメント統括本部長の村野幸哉氏は「ILIPSは26のSBU(Strategic Business Unit)の特徴を活かすIT戦略上の重要なツール」と言う。
きっかけは「経営方針2013」
IHIの事業領域は、9つの事業部門の名が端的に示している。エネルギー・プラント、原子力、社会基盤、海洋・鉄構、都市開発、産業・ロジスティックス、回転機械、車両過給機、航空宇宙がそれ。若干の補足を加えると、社会基盤セクターには橋梁や水門ばかりでなく、地下鉄や道路などのトンネルを掘るシールド掘進機、交通システムもその範疇に含まれる。産業・ロジスティックスセクターが扱うのはパーキングシステムや物流システムなど、回転機械セクターが扱うのはコンプレッサーや濾過器、空調設備などだ。

「確かに、当社のイメージは“重厚長大の典型”かもしれません。航空エンジンのような量産型の製品だけでなく、特注か少量ロットの製品、さらに、ボイラや環境対応システムなど、現地で建設するケースもあります」と執行役員・高度情報マネジメント統括本部長の村野幸哉氏は説明する。
「安全で壊れない機械装置・設備を造るという当社の役割は変わっていません。ですがもう一つ、稼働してから廃棄までのライフサイクル全般をサポートするのも当社の役割、という認識があります。それは言わずもがな、暗黙の了解だったのですが、確実に“見える化”して、製品・サービスの高度化とものづくりの高度化につなげて行こうというわけです」
そこに目標を置いてITの利活用に本腰を入れ始めたのは、「グループ経営方針2013」がきっかけだった。このとき「3つのつなぐ」という言葉が前面に出た。3つとは「ソリューション(上流・下流への事業範囲の拡大、他の事業との組合せによるシステム化の加速)」、「高度情報マネジメント(IHIグループのICT関連リソースの集中による機能強化)」、「グローバルビジネス(マーケティング機能の強化、地域ニーズに根ざした事業モデルの構築)」を指す。
この時点で高度情報マネジメントの具体例として「リモートモニタリング/制御共通プラットフォーム」が挙がっているのだが、調べると2011年の「IHI技報」Vol.51 No.4には「いつでもどこでも装置を支える遠隔監視・保守技術」という論文が載っている。研究開発の現場では早い時点でIoTに着目していたことが分かる。
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