[調査・レポート]

IT部門は積極的関与を―ガートナーが2017年以降のIT人材に関する展望を発表

2017年1月26日(木)杉田 悟(IT Leaders編集部)

ガートナージャパンが2017年以降のIT人材に関する展望を発表した。ITリーダーが抑えておくべきIT人材を取り巻く環境と活用状況をまとめたものとなっている。

 ガートナーがまとめた2017年以降のIT人材に関する展望は4つ。

 1. 2020年末までに、日本のIT人材は質的に30万人以上の不足に陥る

 以前からいわれていることだが、IT人材の不足は2020年に向けて深刻化していく。ガートナーの2016年12月の調査ですでに、「IT人材が不足している」と回答した企業が全体の83%に上っており、就労人口の減少と相まって人材の確保が今後ますます困難になっていく。特に、SoR(Systems of Record)からSoE(System of Engagement)へとITの中心が移行していくに伴い、デジタル人材が不足する一方で既存の人材のスキル転換が困難というミスマッチの問題にぶつかる。

 ガートナーは、ITリーダーは人員の確保に優先的に取り組むと同時に、能力(ケイパビリティとキャパシティ)の確保という観点からソーシングを見直す必要があるとしている。運用などの分野では、電子機器などがAI(人工知能)などを搭載して自律的に行動する「スマートマシンテクノロジー」やオフショアも選択肢に含める必要があるという。

 2. 2020年末までに、日本のIT部門の10%が、IT組織の「一員」としてロボットやスマートマシンを採用する

 深刻な人員不足をロボット(RPA=ロボティクス・プロセス・オートメーション)やスマートマシンで補うことになるだろうということだ。認知型のAIといわれるコグニティブ技術が活用できる分野やプログラム可能なプロセスなどが適しているが、残念ながら現時点でIT部門の関心は低く、戦略的人材配置でRPAやスマートマシンを導入するには少なくとも3年を要するとガートナーでは考えている。

 これらの導入については、技術者が現在の仕事が奪われるという脅威論ではなく、優秀な技術者のノウハウをソリューションで再現できれば、優秀な技術者ほど固定の現場に貼りつかされるという現状を打破し、新しい役割へにステップアップさせることが可能になるというポジティブな効果に目を向けるべきとしている。

 3. 2020年までに、オフショアリングを実施する日本のIT部門の50%が、コスト削減ではなく人材確保を目的とする

 ガートナーによると、国内でのIT人材調達が困難になったIT部門の一部がオフショア開発への取り組みを開始しているという。SI会社では2000年代初頭からオフショア開発が盛んに行われてきた。オフショア開発の多くは中国や東南アジア諸国で行われているが、主な目的は開発コストの削減だった。しかし急速な経済発展を遂げているこれらの地域では人件費が高騰しており、コスト削減のためのオフショア開発はメリットが薄れてきているのが現状だ。

 一方で、積極的な取り組みを見せているのが、企業認知度が低く人材が集まりにくい企業や、グローバル展開を行う企業のIT部門など。これらの企業の目的はコスト削減ではなく、優秀な人材の確保にあるという。東南アジア各国には、日本と遜色ないレベルのIT人材も豊富といわれており、ガートナーは今後、人材獲得を目的にオフショアに取り組むIT分門の割合が急速に上昇すると予測している。

 4. 2020年までに、非IT部門が単独で進めるITプロジェクト (開発・運用・保守) の80%以上が、結局はIT部門の支援・助力を求めざるを得なくなる

 ガートナーの2016年の調査では、IT部門を通さずにデジタルビジネス関連プロジェクトを推進している企業は3割を超えているという。IoTなど現場主導の案件が増加しており、この傾向は今後もしばらく続くと見ている。一方で、非IT部門の取組の危うさを指摘するCIOやIT部門も少なくないという。

 非IT部門は、ITプロジェクト管理の経験に乏しいことに加えて、ITセキュリティ対策のノウハウが無く、専門家による監修・指導がないとガバナンスの問題も含めて高いリスクを抱えることになる。ガートナーは、IT部門が安定したアーキテクチャーやデータ基盤を提供してこそ非IT部門はさまざまなデジタルビジネスにチャレンジできると指摘している。「IT部門はデジタルビジネス関連プロジェクト早期から主体的に関与すべき」というのがガートナーの考えだ。

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