[「人間中心のAI」で企業変革を加速する─生成AIの進化・活用のこれから]
AI活用の推進・調整役「CoE」をどう組織するか─全社にAIパワーを広げるための実践知:第9回
2026年2月18日(水)野田 耕平(博報堂DYホールディングス Human-Centered AI Institute マネジメントプラニングディレクター)
AI技術は日々進化を遂げ、社会実装が現実の段階に入っているが、多くの企業ではまだ部分的な活用にとどまり、AIに対する脅威や不安のマインドが依然として存在する。あるべき姿は「人間中心のAI活用」であり、その推進にあたって何をなすべきか。本連載では、具体的なアプローチを交えながら、企業がAIにどのように向き合い、活用し、未来の成長に役立てていくかを考察していく。第9回では、博報堂D Yグループにおける取り組みを例に、AI活用の全社推進において、CoE(Center of Excellence)がいかに重要であるのかを解説する。

生成AI活用が企業経営の重要テーマになる中で、多くの情報システム部門は「生産性向上を実現しつつ、セキュリティやガバナンスも担保しなければならない」という課題に直面している。しかし、どのような体制でAI活用を全社に推進し、現場に浸透させるべきかという具体像が見えず、検討が難航する企業は少なくない。
手前味噌になるが、博報堂DYグループは、AI専門組織の立ち上げおよびAI-CoEの活動により、以下の成果を挙げてきた。
●100超のAIサービス
●社内アプリケーションにおける最大96%の業務効率化
●60%以上の従業員が複数のAIサービスを利用
●400名を超えるエージェントAI開発者
●GenAI HR Awards 2025準グランプリをはじめ複数のIT関連表彰を受賞
本稿では、博報堂DYグループがAI推進にCoEをどのように立ち上げ、運営してきたかについてお伝えしながら、取り組みにあたってのポイントを解説していく。
そもそも、なぜAI推進にCoEが必要か
GenerativeAIが他のIT技術と決定的に異なるのは「あらゆる業務であらゆる人が横断的に使える」ことだ。広告制作、営業資料作成、データ分析、バックオフィス業務など、生成AIは多岐にわたる業務領域を支援することができる。それゆえ、従来の縦割り型組織構造では価値を最大化しにくいという状況が生まれる。
AI推進にCoEが不可欠な理由は、以下の3点に整理できる。
(1)バリューチェーンを統合できる
生成AIは、例えば広告領域においては、「戦略設計→企画→クリエイティブ生成」という複数工程を一貫してつなぐことができる。したがって、大手企業ほど部門ごとに専門性が分断されているため、横連携を司る統括機能が必要となる。
(2)ユースケースを集約し再展開できる
生成AIは“擬人化された技術”とも評されるほど汎用性が高いが、効果的な使い方は個人によって大きく異なる。だからこそ、現場で生まれる知見を集約し、全社に展開する役割の組織が求められる。
(3)ノウハウ・アプリ開発を共有し、“車輪の再発明”(注1)を防げる
非エンジニアでもアプリを構築できる環境が整ったことで、類似アプリの乱立が発生しやすい。開発ナレッジの共有、標準化、品質管理はCoEが担うべき重要な機能である。
注1:車輪の再発明(Reinventing the Wheel)とは、すでに先人によって確立された技術やツール、解決策が存在するにもかかわらず、それを知らず、または無視して同様のものを再び一から作り直す行為のこと。非効率・無駄な作業・労力を指摘するときによく使われる。
●Next:博報堂DYグループにおけるAI-CoE実践
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