中国メディア各社の報道から、IT関連の最新動向を紹介する「中国電脳事情」。1カ月間に報じられた主要なニュースから重要なものをピックアップしてお伝えする。
シャープを傘下に収めるホンハイ、広州市に新工場を設立へ――「ホンハイは中国から撤退しない」
―新京報(2017年1月3日)
鴻海精密工業(ホンハイ)が、シャープとの合弁会社である堺ディスプレイプロダクト(SDP)の名義で広東省広州市に新工場を建設することが明らかになった。2016年12月末日、SDPは広州市政府と協定書を締結し、広州市に610億元(約1兆円)を投資して、第10.5世代の8Kディスプレイの生産拠点を建設する。
ホンハイグループ董事長のテリー・ゴウ(郭台銘)氏は、広州市での協定書締結式で記者団に対し、「ホンハイは中国から撤退しない。我々は2016年の最後の一日に最大規模のプロジェクトを締結し、最先端の技術をこの地に投下する。ホンハイも今は産業構造の転換とアップグレードの最中だ。我々は中国から撤退せず、今後も居続ける」と表明した。
同氏は続けて、「本プロジェクトは広州市と交渉を始めてから協定書を締結するまで50日も掛かっていない。ここから中国政府の作業効率の高さと、先端技術への執着が伺えるだろう。中国は現在、実体経済を推進しており、仮想から実態を生み出させ、ソフトとハードを整合させる。これは正しい方向性だと私は考えている」とコメントした。
広州市の新工場では、8Kディスプレイ、スマートTV、インタラクティブホワイトボード(電子黒板)などの生産や、最先端ディスプレイ技術の研究開発が行われる予定で、2019年の量産開始を目指している。年間生産高は920億元(約1兆5000億円)に上る見込みと言う。
アナリストからは、テリー・ゴウ氏がこれほど大規模な投資を行う裏には、アップル社のEMS事業の影を薄める目論みがあるという見方も聞かれる。ホンハイは今後もビジネスの多様化を進め、新たな収益モデルの確立を模索するとみられている。テリー・ゴウ氏もかつて、「ホンハイは今後、珠江デルタ(広州、香港、深圳市、東莞市、マカオを結ぶ三角地帯)を本拠地とし、産業インターネットやIoV(Internet of Vehicles・乗り物インターネット)のリーディングカンパニーを目指す」とコメントしたことがある。
ホンハイが米国工場を建設する可能性――70億米ドル投資か
―新浪サイエンス(2017年1月23日)
ホンハイグループ董事長のテリー・ゴウ(郭台銘)氏は、2017年1月22日に行った記者会見の席上で、米国のトランプ大統領の就任を受けて、現在、米国にディスプレイ生産工場を建設する可能性を明らかにした。総投資額は70億米ドル(約7900億円)に上るという。
テリー・ゴウ氏は、トランプ大統領の方針である「米国の利益優先(アメリカファースト)」についての見解として、「このような政策は貿易保護主義を氾濫させ、経済成長の障害となる」と明言した。その上で、米国における新工場建設の是非について、「諸条件による」とし、投資条件等については改めて米国側と協議する姿勢を示した。
同社による米国工場の建設計画はこれまでにもあり、テリー・ゴウ氏は、ホンハイのビジネスパートナーであるソフトバンクの孫正義氏と投資について協議したこともあるという。その後、孫正義氏がトランプ氏と面談した際に、ホンハイによる米国への投資の件が予定外に露見したとのことだ。
テリー・ゴウ氏は、「孫氏は私の友人であり、孫氏からも米国投資について相談があった」と語った。その相談の際に、「米国にはディスプレイ産業がないにもかかわらず、ディスプレイ市場としては世界第2位だ」と述べ、「米国にディスプレイ工場を建設するとしたら、投資額は70億米ドル(約7900億円)に達し、3~5万人の雇用を生むだろう」との見解を示したという。同氏によると、これらはすべてプライベートでの発言だったが、「2日目にはメディアにすっぱ抜かれた」という。
同氏は最終的に、「ホンハイの米国投資はまだ初期の計画段階であり、まだどうなるか分からない」とお茶を濁した。この他、「(仮に米国に進出しても)ホンハイは中国には残り続けるので、北京方面から当社へ圧力が掛かることはありえない」と強調した。
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