デジタルビジネス時代になり、コンタクトセンターも様変わりしてきた。最近ではAIや音声認識技術を導入して自動化が図られるなど技術的発展は目覚ましい。総合ポータルサイト「Yahoo! JAPAN」を運営するヤフーもコンタクトセンターシステムを一新し、B2B事業の強化に成功している。2017年6月に行われたジェネシス・ジャパンのプライベートイベントで、その取り組みが紹介された。
既存クラウドサービスとの相性が大事
これをすべて満たしていたのが、ジェネシスの「PureConnect」だった。PureConnect導入の理由として加茂氏は更に4つのポイントを上げている。
①オールインワンのサービスであること。マルチチャネル対応のほか、業務管理、品質管理機能が標準のままでも十分に活用できるスペックを持っている。
②オプトイン型のため無駄なく利用できること。豊富な機能をすべて使わなければいけないということではなく、使いたい機能をオプトイン(選択)して自分たちが使いたい時に使える。あるいは、機能が揃っていれば、機能に対して自分たちが戦略を合わせることもできるなど、柔軟な使い方が可能。
③シングルテナント・クラウドサービス。ジェネシスがヤフーの定めるセキュリティ基準に合致したクラウドサービスを、日本国内で展開している。
④自社での管理が可能なツールセットがあること。企画と運営をコンタクトセンターが自前で行えるツールセットが用意されているので、過度なIT部門への依存から脱却し、自給自足が可能になる。
この4点以外に、もうひとつ重要な選定理由があった。それが、クラウド連携の相性だ。ヤフーでは顧客管理にセールスフォースを使っており、PureConnectがそのセールスフォースと相性が良かったことを上げている。PureConnectに大きな手を入れずに、シングルサインオンはもちろんのことスクリーンポップアップやコール転送、録音再生、ログ連携などが設定のみで利用可能になる。この容易に連携できるということが「システム選定では大事なポイントだった」と強調している。
導入の流れを見ると、2016年9月にプロジェクトが開始して12月にクラウド化に向けたITインフラの準備が完了している。2017年1月にテスト環境の構築が完了し、そこから3月までがテスト運用期間。3月末にはクラウド化が完了し、4月に新システムが稼働している。
導入フェーズにおいては、ジェネシスのプロフェッショナルサービスチームとの共同作業で実施できた。月に1回のステアリングコミッティーで課題解決を行った。ここでは大きな方向転換を行うこともあった。その他は、週に何度もやりとりすることで緊密な課題管理ができたと実感している。結果、6カ月でスムーズに導入、4月のサービス開始後、大きな事故は1回も起こっていないという(図3)。
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短期導入で人的リソースをコミット
今回の成功のカギについて加茂氏は「短期集中で導入を進めたため、ヤフーからもジェネシスからも人的リソースがコミットできたことが大きかった」としている。また、ジェネシスのプロフェッショナルサービスの課題管理が的確で、黄色信号・赤信号がシームレスに上がっていたという。
それでは、導入後どのような変化があったのか(図4)。まず、コールKPIについてはリプレイスによる大きな変化はなかった。これを加茂氏は「フラットに運用できている」とポジティブに捉えている。成績が上がるに越したことはないが、まずはリプレースが大きな問題もなく乗り越えられた証左と捉えているのだ。
リプレース直後だけに、運用負荷は上がっている。新しいツールのためのトレーニングが発生したほか、操作も未熟で苦労した。ただし、これはリプレースにはつきもので「織り込み済み」だった。機能の発達や操作の習熟とともに運用負荷は当然下がっていくと思われる。
運用の柔軟性は目に見えて向上している。これからは更に幅広く柔軟な対応を進めていって、IT部門に依存しない自給自足を促進させていきたい考えだ。
機能の活用は、導入直後なので使いこなせていないのが現状だ。まだ使ったことのない機能がたくさん残っているが、この先どんどん活用を促進してセンター運営に役立てていきたいとしている。
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今後は、新しい機能を積極的に活用することで、運用負荷を下げ、効率も上げていくのが目標だ。そのうえで、ユーザーからの疑問・質問に答えるだけの「コストセンター」から、ユーザーのビジネスを最大化する「プロフィットセンター」への脱皮を図っていく。
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