ビッグデータ分析のクラウドサービスを提供しているトレジャーデータは2017年7月11日、オープンソースのログ収集基盤ソフト「Fluentd」の上位に当たる商用製品で、金融機関などのミッションクリティカルなデータ収集に適した「Fluentd Enterprise」を発表、同日提供を開始した。OSS版と比べて、エンドツーエンドでの暗号化や専用のプラグイン(接続アダプタ)といった特徴がある。価格は非公開。
Fluentdは、多種多様なデータソースからデータを集めてきて、これを一元的にフィルタリング/バッファリングして、リアルタイムに多種多様なデータストアに転送するログ収集基盤ソフトである(図1)。マーケティングのためのデータ分析や、システム監視、イベントログ監視によるセキュリティ対策といった用途に使う。OSS版は世界で5000社100万台以上にインストールされているという。
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今回、OSS版のユーザーの中でも特に金融機関からの要望によって、ミッションクリティカルな用途に使える上位版を開発した。銀行は現在、情報システムをクラウドに移行する流れから、複数のデータセンターやクラウドサービスを利用している。これらからデータを安全に収集する需要が高いと、米Treasure DataのCTO(最高技術責任者)である太田一樹氏(写真1)は指摘する。
Fluentd Enterpriseでは、データ送信元からデータ格納先までエンドツーエンドでデータを暗号化できる。さらに、米Treasure Dataによって安全に使えることをテスト済みのモジュールだけを提供する。ミッションクリティカルな用途に合わせて、24時間365日のサポートも提供する。
データソースやデータストアに接続するためのプラグインモジュールについては、Fluentd Enterpriseのために米Treasure Dataが新規に開発した専用のプラグインを提供する(図2)。具体的には、データストア用として、ログ解析ソフト「Splunk」、クラウドストレージの「Amazon S3」、米Treasure Dataのクラウド、の3つのプラグインを用意した。
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このほかのデータストア用として、Hadoop HDFSとKafkaについては、すでにあるOSS版のプラグインをFluentd Enterprise向けに認証する形でバンドルしている。データソース用のプラグインについては、Tail、Syslog、HTTP、TCP、UDP、クライアント用ライブラリなど、OSSのプラグインの中から基本的なものを抽出してバンドルしている。
クラウド型データ分析サービスも用途拡大してリブランド
同日、提供中のビッグデータ分析サービス「TREASURE DMP」をリブランドして、新たに「TREASURE CDP」として提供を開始した。これまでのTREASURE DMPでは、主にオンライン広告の配信ログを分析の対象としてきたが、今回のリブランド化では、顧客の行動データや属性データを統合して活用するCDP(Customer Data Platform)を標榜する。
TREASURE CDPは、いわゆる“プライベートDMP(Data Management Platform)”の機能を提供するクラウドサービスである。Webサイトや実店舗といった様々な販売チャネルにおける利用者の行動ログを収集し、収集したデータをもとに、メール配信サービスなどの各種のマーケティングツールと連携してマーケティング施策を実行できる。
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CDP製品の中でのTREASURE CDPの優位性は3つあると、米Treasure Dataで最高経営責任者(CEO)を務める芳川裕誠氏(写真2)は言う。多様なデータソース/データタイプを扱えること、制限なく大量に保管できること、マーケッター本人がデータを分析できること、の3つである。「永続的なストレージを提供する。過去に収集したデータを生データのまま消さずに貯めておくことで、新しい価値が生まれる」(芳川氏)。
TREASURE CDPへとリブランドした背景について芳川氏は、「ビジネスがデジタル化によって変わってきている。デジタル化によって得られるデータを活用し、パーソナライズ化された新しい顧客体験を提供している企業が伸びている」と説明している。