日本IBMは2018年5月14日、説明会を開き、蓄積した知識を基に自然言語を用いた質問応答などを実現するサービス群「IBM Watson」の情報をアップデートした。データ分析環境「IBM Watson Studio」を強化してデータの収集・加工もできるようにしたほか、会話応答などのアプリケーション開発機能を強化した。
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IBM Watsonは、蓄積した知識を基に、自然言語を用いた質問応答などを実現するサービス群である。コンタクトセンターの問い合わせ対応や、チャットボットによる自動応答システムなどに使われている。直近では、米IBMが2018年3月に開催したプライベートイベント「THINK 2018 IBM」で、データの活用にフォーカスした強化を施したことを発表している。
(1)1つめの強化として、AI活用のためのデータ分析基盤をSaaS型で提供するサービス「IBM Watson Studio」を強化し、データを分析するだけでなく、データを整備する機能を追加した。データを収集して加工し、データを分析可能な状態に整備する機能に注力した。
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「先進ユーザーは、きれいなデータを用意することに注力している。データの整備に8割の時間をかけている」(日本IBM 取締役専務執行役員 IBMクラウド事業本部長の三澤智光氏)。
IBM Watson Studioの事例の1つに、本田技術研究所がある。同社は、全社のデータを複数の部門が自由に分析し、分析結果を互いに教え合える環境をIBM Watson Studioで構築しているという。
IBM Watson Studioはクラウドサービスだが、オンプレミス環境でも同様のデータ整備・分析機能を提供できるように、プライベートクラウド構築ソフトの強化版「IBM Cloud Private for Data」を2018年5月末に発表する予定である。
(2)2つめの強化として、チャット形式でコンピュータとユーザーが対話するアプリケーションを開発できるようにする基盤サービス「IBM Watson Conversation」を、「IBM Watson Assistant」へと強化した。会話フローの開発を支援する機能を追加したほか、会話ログを簡単に分析できるようにした。
IBM Watson Assistantでは、ユースケースに特化した事前定義済みのコンテンツを提供する。これにより、より迅速にアプリケーションを開発できるようになるとしている。例えば、ビジネスに関する情報を理解して顧客を支援するカスタマーケアのコンテンツや、注文の支払いや請求などが可能な電子商取引のコンテンツなどがある。
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(3)3つめの強化として、モバイル端末用の機械学習フレームワーク「Core ML」に対して、IBM Watsonを活用して作成したモデルをエクスポートし、モバイルアプリを開発できるようにした。これを「IBM Watson Services for Core ML」と呼ぶ。現時点では、IBM Watsonの画像認識APIをモバイルアプリで利用できる。
記者発表会では、IBM Watson Services for Core MLのデモンストレーションとして、フィールドエンジニアを支援するモバイルアプリの例を見せた。iPhoneのカメラで故障した部品の画像を映すと、Watsonが部品を認識し、フィールドエンジニアとチャットし、カメラ映像上に情報をオーバーライドしながら、故障の内容や修復方法などを提示する。