ドラッグストア大手のココカラファインは、経営視点での計数管理を可能にするため基幹システムとして「SAP S/4HANA Retail」を採用した。部門最適で統合されていたプロセスとシステムをSAP S/4HANA Retailで全体最適化する。SAPジャパンが2019年8月29日に発表した。
ココカラファインは、積極的なM&Aで規模を拡大してきた。2013年に事業子会社6社の販社統合に伴いPOS、基幹システム、会計システムなどのシステム統合を行った。販社統合にかけられる時間は1年間しかなく、「とりあえずは販社統合後に、現行業務が確実に動くことを担保することが目標となっていた」(上席執行役員管理本部 IT・物流開発部長兼IT開発チームマネージャーの尾池泰之氏、写真1)。
そのため行われたのが、部門最適の統合だった。ドラッグ事業部門、調剤事業部門、経理、総務、人事など、それぞれの事業部の利便性を追求して、部門ごとのシステム統合を行った。その結果、「ドラッグ事業基幹システム」「調剤基幹システム」という2つの基幹システムが存在していた。加えてグループ共通の会計システム、予算管理システム、情報系システムもあった(図1)。
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現場運用の設計を重視したため、事業・部門損益といった経営視点での計数管理が困難になっていた。事業部門ごとに分析は行われており、レポートも提出されているが、システムがばらばらなので全社的にシームレスなデータ連携がなされていないからだ。
そこで、標準的な業務フローを持ったERPパッケージの導入を検討、リテール(小売)向けの業種別機能を標準機能として持つ「SAP S/4HANA」の採用を決めた。個別最適化している各部門の業務フローをSAP S/4HANA Retailで標準化する考えだ(図2)。
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今回のプロジェクトの目的は、経営視点での計数管理を可能にすること。そのためプロジェクトのユーザーは経営管理となる。業務フローの標準化で問題となるのが、手法の変更に伴いユーザーに負荷がかかること。しかし尾池氏は「目的である事業管理が果たせるのであれば、管理部門の負荷が多少上がるとしても、手法が変わることをいとわずに進めていく」と決意を見せている。
今後については、「小売部門でも仕入れたものをただ売っていくというビジネススタイルも限界にきており、将来サービス化するかもしれない。そういった新しい課題には、ERPのモジュールで対応していきたい」(尾池氏)としている。システムの本格稼働は2020年春を予定している。