トヨタ自動車北海道(北海道苫小牧市)は、新型車「ヤリス」に搭載する駆動ユニットの生産ラインに、設備の稼働情報を可視化・分析するIoTシステムを構築した。生産ライン上にあるPLCやCNCなどの制御機器から閉域のモバイル網を介してデータを収集し、クラウド基盤で可視化・分析する。IoTシステムを構築したベンダーのインターネットイニシアティブ(IIJ)が2020年8月3日に発表した。
トヨタ自動車北海道は、オートマチックトランスミッション(自動変速機)やCVT(無段変速機)、ハイブリッドトランスアクスル(電気式無段変速機)など、車の駆動ユニットを製造し、国内外の工場に供給している。今回、ハイブリッドトランスアクスルを加工・組付する生産ラインにIoTシステムを導入した(図1)。
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2019年12月から稼働を開始しており、生産量が従来の3倍に増えている。現在、新生産ラインの約370の設備を対象にデータを収集しており、データ点数は約3万に上る。順次、対象設備や取得データの種類を拡張していく予定である。
生産ラインの新設にあたり、IoTシステムを導入する要求があった。設備の制御を行うPLCやCNCから設備の稼働状態を取得してダッシュボード上でリアルタイムに把握する要求、設備・ライン単位で消費電力を測定する要求、工場内設備に出向くことなくオフィスからリモートアクセスによってPCの再起動やデータ送受信制御を実施する要求である。
構築したIoTシステムの特徴の1つは、モバイル通信機能を持った産業用PCを生産ラインに組み込み、データ収集やリモートアクセスのためのネットワークを構築したことである。既存の情報系ネットワークに影響を与えず、棟内工事も要らない。産業用PCからクラウドまでの通信はすべて閉域網を利用するため、オンプレミスと同等のセキュリティと性能を確保している。
もう1つの特徴は、国内外の250以上のPLC・CNCからデータを取得できる、アドバンテックのデータ収集ソフトウェア「WebAccess」を利用したことである。また、産業用PCとクラウドの中間に位置するIIJ IoTサービス基盤上では、収集したデータに属性情報(工場番号、ライン番号、製造品、担当部課など)を付与するなど、データやデバイスの管理機能を提供する。