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[DX/イノベーションの推進者へ、未来に向けての提言─DBICビジョンペーパー]

Prologue 我々のイノベーション・ジャーニー─日本の将来への危機感から生まれたDBIC:第1回

2020年9月1日(火)デジタルビジネス・イノベーションセンター(DBIC)

経営とITに携わる者にとって「グローバルで見た日本の競争力」の現状は直視せざるをえない。「IMD世界競争力ランキング」では日本の順位が年々低下し、2020年6月18日発表では過去最低の34位。ここにはさまざまな見方があるにせよ、日本の企業や経営者は改めて現状・実態を受け止め、どんなアクションを起こすべきなのかを考える必要がある。このほど、日本のソーシャルイノベーション推進に取り組むデジタルビジネス・イノベーションセンター(DBIC)が、設立から4年間の活動を振り返りながら日本の競争力の源泉を検証し、この先のあるべき姿を示した「DBICビジョンペーパー」を発刊した。DX/イノベーションの推進者たるITリーダーに向けて、その全内容を連載の形でお届けする。

今こそChangeをChanceに
──DBICビジョンペーパーからの警鐘と提言

特定非営利活動法人CeFIL 理事
デジタルビジネス・イノベーションセンター(DBIC)共同設立者 副代表

西野 弘

 2016年5月、大手企業約30社が参集し、特定非営利活動法人CeFILに事業創造のための開発拠点/プラットフォームとして、デジタルビジネスイノベーションセンター(DBIC)を設立した。目的は、デジタルトランスフォーメーション(DX)とソーシャルイノベーションの推進だ。DXの言葉すらない4年前に、将来の日本企業の未来に対して大きな危機感を感じ、筆者は元東京海上日動の常務を務めた横塚裕志と共に、DBICでは、考えうる変革を推進するプログラムを4年間実施してきた。

 本DBICビジョンペーパーは、半年の分析と議論を経て2020年7月1日に発刊した。DBIC設立以来の提携関係にあり、世界競争力ランキング/世界デジタル競争力ランキングを実施しているスイスの著名ビジネススクールIMD(International Institute for Management Development)の協力を受けて実現したものだ。

崖から落ちている日本、コロナ禍で明らかになった日本の実力

 刊行に向けた議論と執筆の途中で、コロナ禍が起こり、世界全体が未曾有の事態となった。あらゆる組織そして個人が一挙手一投足で緊張を強いられる生活に一変し、それと同時に、さまざまな側面で日本の現状が明らかになり、我々のビジョンペーパーの分析を裏付ける「日本の弱点」の事実も多く顕わになった。

 その1つに、1998年以降のIT革命などと言われている、近年の政府および企業の膨大なIT投資とそこに費やされた時間は、実のところ自らが認識しているほどには、本質的な解決や競争力向上がなされていないという事実がある。「2025年の崖」というが、日本はすでに崖から落ちているのだ。

コロナ禍の今こそChangeをChanceに

 この先、世界が大きく変わることは間違いないが、多くの国や企業などの組織が、今回のコロナ禍の影響を変革や進化の契機としている。今までの古いルールや慣習、タブーを突き破り、新しい価値観を持つ組織に変革していく──それができなければ存続もままならない。今回のコロナ過で、どの組織もそう感じている。日本国内では今こそ働き方改革をすべきと声が高まり、コロナ対策から実際に進んでもいるが、これから行うべきは本質的な“活き方改革”であり、そこからすべてを改めて見直すべきであると考える。

 今回直面した事実を歴史的にも大きな転換点としてとらえて、個人および組織として新たな思考と行動が求められている。それに必要なことはたった6文字で「変革への勇気」である。その先にしか未来は存在しないとひとりひとりが再認識すべき時代に我々は存在している。

 以下、本ビジョンペーパーを連載の形でIT Leadersの読者にお届けする。今後のデジタルネットワーク社会における競争力強化のために本来何をすべきかを我々なりに提言している。ぜひとも参考にしていただければ幸いである。

DBICエピソード“ゼロ”

 2016年5月にデジタルビジネス・イノベーションセンター(DBIC)を設立してから、丸4年が経過した。我々の“イノベーション・ジャーニー”は、そのDBIC設立からさらに2年ほど遡る2014年春頃から始まっていた。まずは、当時のことを皆様にご説明したい。

 6年前の当時、現DBIC代表の横塚裕志は、東京海上日動火災保険の常務取締役を務めた後、ITシステム会社の社長に就いており、私は大企業とグローバルカンパニー向けコンサルティング会社の社長を務めていた。

 その頃、横塚と私は、2か月に一度ほど国内外の方々に話を聞いて議論する「朝会」を定期的に実施していた。講師から聞けば聞くほど、日本企業の幹部には、グローバルレベルで起こっている事や、これから起き得る大きな変革に関する認知と理解がない、ということに気づかされた。その後、世界で起きていることを肌感覚で確かめるため、横塚と2人で半年かけて海外諸国を回ることになる。

 日本でも十分な情報の得られる米シリコンバレーではなく、シンガポールやスイス、北欧各国など、日本企業が訪問しようとしない場所をあえて選んだのだが、我々の想像以上のスピードで世界は変化していた。

 帰国後、その事実を日本企業の経営者に説明しても、話は通じない。愕然とした。さらに危機感を強めた我々は、縁のある日本企業のCEO・COOレベルの幹部に状況を理解してもらうため、100名規模のセミナーを開催。シンガポール経営大学の学部長など、多彩な面々に話をしていただき、日本企業の幹部が4時間以上も熱心に傾聴してくれた。

 そして、その場で横塚が「日本企業の将来の為に何をすべきか」を考える研究会の設立計画を説明すると、26社もの名だたる企業が賛同くださり、その後、賛同企業の幹部の方々も含め、半年かけて議論を重ねた。イノベーションを起こすための具体的な情報、知識、コミュニティが必要だとの結論に至り、DBICの設立構想を固めた次第だ。

 我々は同時に、日本の大学との連携も探ったが、あまりにもグローバルの動きを認識しておらず、必要とされる理文融合のモデルとも程遠い。日本の大学との連携をあきらめ、海外の大学を模索すると、まずはシンガポール経営大学が協力を申し出てくれた。

 その紹介で、世界トップクラスのビジネススクール「IMD」の新しい動きを知る事となり、スイスの本部で、ドミニク・テュルパン学長(当時)と、マイケル・ウェイド教授に我々の思いをお伝えする機会に恵まれた。

DBICメンバー企業の幹部向け研修プログラムで定期的に講師を務めるIMDのマイケル・ウェイド教授。門下生は150人を超える

 まだDBICの設立前であり、説明はわずか20分足らずだったにもかかわらず、その場でウェイド教授は協力を約束してくれ、テュルパン学長は、DBICの設立パーティーにも参加をしてくれた。世界のIMDが設立したての組織に協力してくれるのか、とメンバー企業が驚いていたことを良く覚えている。

 これが、会社でも役所でもなく、組織的な支援なしに、個人の思いから設立に至ったDBICの始まり、「エピソードゼロ」である。

●Next:4回目のマクロシフト=歴史的転換点に日本企業はどう対峙するか

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