[DX/イノベーションの推進者へ、未来に向けての提言─DBICビジョンペーパー]

「株主第一主義」から「SDGs思考」へ─今こそ経営者が転換すべき時:第6回

日本が再び先進国となるために─DBICからの提言と処方箋[前編]

2020年11月25日(水)デジタルビジネス・イノベーションセンター(DBIC)

前回紹介した分析結果で、日本の病巣がより明確に浮かび上がり、日本は何をなすべきかが見えてきた。ここでは、デジタルビジネス・イノベーションセンター(DBIC)として、日本が再び先進国として輝くための指針を「提言」としてまとめ、治癒や改善に必要とされる「処方箋」を提示する。この国に残された時間は少ない。DBICからの提言と処方箋を、前・後編の2回に分けてお伝えする。前編となる本稿は経営トップに向けた我々のメッセージである。

Introduction─もはや日本は先進国ではない

 本連載の冒頭で示したように、IMD世界競争力ランキングで、日本は低迷している。2020年も34位と残念ながらランクダウンした(関連記事IMD世界競争力ランキング34位─日本が抱える最大の課題は「ビジネスの効率性」)。ビジネス分野のレベルが近年下がっていることが順位を下げている大きな理由だ。このランキングがスタートした1989年から5年間、1位を続けたときに比べると雲泥の差がついており、その結果への分析や我々の触診は、第5回および第6回に示したとおりである(関連記事勝つための構えは、あるのか─DBIC活動からの触診と洞察[前編][後編])。

 それらを踏まえて、今回と次回では、デジタルビジネス・イノベーションセンター(DBIC)による分析と触診から浮かび上がった日本企業特有の課題を解決することを目的とする。IMDをはじめとするヨーロッパ・シンガポールの提携機関から学んだ21世紀の新しい経営手法の情報も加えながら、日本企業がふたたび輝きを取り戻すための実行策を、提言と処方箋という形で提案していく。

 IMDのランキングが下がっているとはいえ、多くの日本企業は、まだ日本の品質や生産性が世界レベルに劣っているとは思っていないだろう。

 しかし、この10年ほどで世界の競争原理は大きく変わった。スポーツで言えば新しいルールと環境の中で、あるいはそもそも新しい競技の中で、競争力を発揮できるチームの再構築が求められていると考える。

 監督である経営者は、チームメンバーである社員に対して、新しい環境や競技、ルールに基づいたチームのビジョンを作り、チームを再編成し、各選手が能力を存分に発揮できるような新しいトレーニングを実施して、競争力を高めることにチャレンジすべきであると思う。

 私たちがDBICを運営している中で感じている日本の大企業の症状を第5回・第6回で洗い出したが、日本人、あるいは日本企業が怠惰をむさぼっていたからではない、ということははっきりしている。みな、朝から晩まで必死で働いているにもかかわらず、競争力をどんどん失っているというのが実情ではないか。

 その根底には、20世紀型のビジネスをそのまま踏襲して経営しており、世界のパラダイムシフトについていけていない、という大きな“病巣”がある。

 もう1つ、世界及び他社から謙虚に学ぶ姿勢が弱い、という病巣もある。今こそ再度、世界の動きと今回のコロナ禍後の社会、産業の将来をしっかりと見つめつつ、未来への道を拓くべきではないかと強く感じている。

 「日本は崖から落ちて、もはや先進国ではない」という認識が私たちの叫びに似たメッセージであるが、どうしたらキャッチアップでき、「日本再生」できるかを議論した結果、見えてきた変革すべき項目を以下に示す。

提言1:Management─経営トップの責任を大きく変えよ

提言1-1
持続可能な社会に向け自社の存在意義を明確にし、会社ビジョンとして発信せよ

 経営トップは「人類とその社会をより持続可能な社会にしていくために、自社がどのようにビジネスとして貢献していくのか」を新しく考え、自社の存在意義として明確に定義し、ビジョンとして発信することを提言する。

 世界規模の転換が起きている。米国主要企業のCEO団体「ビジネス・ラウンドテーブル」は、2019年8月、以下の声明を出し、180名以上のCEOがサインしている。

「個々の企業は、自身の『コーポレート・パーパス(企業の目的)』を果たしつつ、当社自身、社会、国の未来の成功のためにすべてのステークホルダーに価値を提供する」

「株主第一主義を見直し、従業員や社会などの利益を尊重した事業運営に取り組む。これが、長期的に株主利益を最大化していく」

 この動きは、株価上昇や配当増加など投資家の利益を優先してきた米国型資本主義の大きな転換を示す。2020年2月のダボス会議でも「脱資本主義」が議論され、多くの賛同者が出てきている。来年開催予定のダボス会議のアジェンダも「The Great Reset of Capitalism=資本主義のグレート・リセット」となった。

 VUCA(Volatility:変動性、Uncertainty:不確実性、Complexity:複雑性、Ambiguity:曖昧性)の時代、GAFAなどグローバルの巨人たちの脅威、自然災害などの脅威、新型コロナ禍などのパンデミックの脅威……。こうした、多様で強力な脅威に対抗していくためには、売り上げや利益といった手段をゴールに置くだけでは戦略が立てられない。長期的な「自社の存在意義」をビジョンとして掲げることが最善の策である。

 つまり、売り上げや利益という目標ではなく、「自社の存在意義は○○であり、□□で社会に貢献する」というステートメントをビジョンとして掲げることを冒頭で提言す会社のビジョンをはっきりと公に発信することは、株主、従業員、顧客、パートナーなどのすべてのステークホルダーに対する明確なコミットメントでもある。

 また、同じ想いを持つ企業、コミュニティ、大学、研究者、スタートアップなど、多くの仲間と共感する機会をつくる契機ともなり、世界的な大きなエコシステムが生まれる可能性を持つ。

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)との戦いで、「自分の国だけでも助かろう」「自分の会社だけでも生き残ろう」といった考えは通用しないことがわかった。自分たちだけのための利益至上主義では人類は成り立たない。世界中の皆で持続可能な社会をつくることが至上命題。そのなかで、自社がどんなテーマで貢献していくのかを定めることは、新しい時代のビジネスに変革していくための大前提となる。

デンマーク・デザイン・センターのクリスチャン・ベイソンCEOは、「経営者の役割を、どこに向かうか示すことへ変革せよ」と語る

処方箋①(思考転換)
経営トップが「株主第一主義」から「SDGs思考」に生まれ変わる

 2015年9月に国際連合が宣言した「SDGs(Sustainable Development Goals)」のメッセージを読むと、その切実さが心に染みる。

 「2030年までに17の社会課題を解決することができないと、人類は生存の危機に陥る。そして、それは政府の力だけでは解決できない。ビジネスという持続可能な仕組みで解決策をドライブすることが必須だ」とアピールしている。ビジネス側の責任が必須だ。

 「本業のビジネスとして解決策を実行せよ」とのメッセージを経営トップはしっかり受け止め、自社でビジネスとして解決策を実行することが求められている。

 CSRの時代において、環境などの社会課題への貢献は、「コストがかかるが利益の一部は社会に還元しよう」という発想が主流であった。しかし、SDGsはそこが決定的に異なる。「本業ビジネスで、社会課題を解決する」という発想である。

 そして、「社会課題の解決は市民への価値創造であるから、まさに、そこにブルーオーシャンが存在し、それをビジネスにしているから長期的に株主の利益につながる」という考え方にすぐさま宗旨替えすべきだ。

 そのためには、自身で、2015年のSDGs宣言を徹底して深く読み込むことが大事だ。そこには、人類の危機が迫っていることが手に取るように書いてあり、17のテーマを全部達成してくださいと書いてある。スタッフに読ませてレポートを出させてはいけない。自身で感じることが重要なポイントだ。理屈ではなく、新しい時代の新しい風を肌で感じることが、会社の新しいビジョン作りや行動変容につながる。

国連は、17の目標からなる「持続可能な開発目標(SDGs)」を掲げ、2030年までに達成するとしている
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●Next:SDGs思考へのアクション──経営トップが主導してなすべきこととは

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