[木内里美の是正勧告]

デジタル庁は電子政府先進国に学び、後進国の汚名をそそげ!

2021年2月26日(金)木内 里美

コロナ禍に功績があるとすれば、日本のデジタル化の遅れを暴いたことではないかと思う。国連が2020年に発表した電子政府ランキングのトップ3はデンマーク、韓国、エストニアで、日本は周回遅れどころではない14位にとどまる。政府が2021年9月1日の始動に向け準備を進めるデジタル庁は、こうした電子政府先進国に学ぶ必要があり、このチャンスを逃したら、日本の電子政府・電子行政はもう出来上がらない。

 コロナ禍で暴かれた官のデジタル化の遅れ。感染者の情報管理といい、対策に伴う給付金や支援金の配布の混乱や遅延といい、その対応は耳目を疑うばかりだった。

 スマートフォン用の接触確認アプリの「COCOA(COVID-19 Contact Confirming Application)」にまつわる状況は散々だ。厚生労働省の発表によると、2021年2月26日時点でのダウンロード数が2570万件、陽性登録件数は10985件(図1)。国内のスマートフォンの個人保有率からすると、残念な普及率だ。仕様も度々変更され、例えば対象となる接触期間は陽性登録から遡った14日間だったのが、登録感染者の発症日または陽性となった検査日の2日前以降に変更されている。

図1:接触確認アプリ「COCOA」のダウンロード数・陽性登録件数の推移(出典:厚生労働省)
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 COCOAから濃厚接触者として通知を受けたとしてもスピーディに検査を受けられるわけでもなく、対応も自治体によってまちまちだという。これでどれほどの感染トレースと予防管理ができるのか大いに疑問である。おまけに2020年9月からAndroidデバイスからのデータが届かないバグを抱えていて、4カ月も放置されていた事実も判明した。ついに運営が厚生労働省から内閣官房に移管されるという、後進国としか言いようがないお粗末な顛末となった。

 輪をかけてひどいのが、新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理支援システム「HER-SYS」だ。保健所や医療機関が利用するが、入力する項目が多すぎて職員の評判はすこぶる悪い。ほとんどのアプリがマニュアルレスの時代に、33ページにも及ぶユーザーマニュアルがあるのだ。理解するだけで大変だし、ただでさえ逼迫する現場にシステムが負担を掛けていいわけがない。さすがに現在は入力項目を3分の1に減らしたが、使いにくさは変わらず、結果としてファクスでの届け出が続いているし、目的とした感染状況の把握もできていない。

どこがダメなのか──「3つのD」に問題

 こうした実態から、“デジタル後進国”や“デジタル敗戦国”などと自虐的に揶揄されてデジタルばかりがクローズアップされたが、よく観察すると「3つのD」に問題があることがわかる。

 1つ目は「制度設計のデザイン」のDである。このDの弱点はあらゆる分野にみられる、いわゆる日本の仕組み作りとしてのソフトウェア問題である。

 コロナに伴う各種の給付金申請では、その複雑さや煩雑な処理ゆえに申請を諦める人も多い。緊急事態宣言下の飲食店に対する1日6万円の協力金の支給も、売上げが1日2~3万円しかない個人事業のような店舗にも一律支給される。また、前もって自主的に閉店時間を20時にして営業していた店舗には支給されないそうだ。売上げや収入の減少は納税記録があるのだから、データが連携して共有できていれば最低限の情報で簡易な申請ができ、迅速に給付できるはずだ。制度設計の不備が甚だしい。

 2つ目は「データ設計とデータマネジメント」のDだ。国民や法人のデータが適正に収集され、管理され、連携して活用できるようなデータ設計とデータマネジメントができていないために、給付金の配布も適切に迅速にできず、事情の考慮もなく「一律」支給しかできない。制度設計の稚拙さと支えるデータが完備していないことがありありと見える。

 改善の前提として、デジタル時代の個人情報保護の制度とセキュアな管理ができるIDプラットフォームが必要だ。いまだにマイナンバーカードという物理資産に頼っているようでは、デジタルは進まない。必要なのはIDとしての固有の番号情報=マイナンバーだけである。

 HER-SYSの失敗も同根だ。明確なデータ活用のデザインがなく、現場の入力の負荷も考えずに、「リアルタイムでの情報把握」という頭の中だけの理想を追った。企業でもよくある、設計の明らかな不備である。

 そして、3つ目のDは「情報システムとしてのデザイン」のDだ。中核にはデータのデザインがあるが、利便性を左右するのはUX(User Experience)デザインである。これを疎かにして、いきなりシステムのデータベース設計に入ってしまうとか、作りやすさ重視で使いやすさを置き去りにしたUI(User Interface)にしてしまう過ちは、後を絶たない。

 これら3つのDの問題を解決できる体制を整えなければ、日本の電子政府や電子行政の成功は望めない。反省材料が豊富にあり、その思いが鮮明に共有されている今こそ立て直しの絶好のチャンスである。

●Next:この国からオードリー・タン氏のような人材は出てこない?

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