[市場動向]

米NEC X、捜索・救助支援ドローンのスタートアップ「Flyhound」を設立

新事業創出プログラムから9件が離陸、今後3年で20件の事業化を目指す

2023年1月31日(火)神 幸葉(IT Leaders編集部)

NECの米国子会社であるNEC Xは2023年1月19日、米Flyhound(フライハウンド)の設立を発表した。Flyhoundは、ドローンを使った捜索・救助支援ソリューションを研究開発するスタートアップ。ドローンによって行方不明者や災害被災者の携帯端末から位置を特定し、捜索エリアのデジタル地図を提供して早期救助に貢献する。Flyhoundは、NEC Xの「新事業創出プログラム」9件目の事業となり、同社は今後3年間で累計20件の事業化を目指すという。

シリコンバレー発で新事業を創出する戦略子会社

 シリコンバレー(米カリフォルニア州パロアルト)のNEC Xは、NECの技術やノウハウをシリコンバレーの環境の中で発展させる形で新事業創出に取り組む戦略子会社である。2018年の設立以来、NEC Xは新事業創出プログラムを通じてさまざまな事業の立ち上げに携わってきた(関連記事NEC、シリコンバレーに新事業を開発するための新会社「NEC X」を設立)。

 同プログラムは、ビジネスとテクノロジーに精通した客員起業家(EIR、注1)と、技術、研究者をマッチングするプラットフォームの役割をはたしている。NEC XでPresident & CEOを務める井原成人氏(写真1)は、同社の事業の進め方を次のように説明する(図1)。

 「日系企業がシリコンバレーに進出する際は、(その領域の)スタートアップの技術やビジネスモデルを取り入れる、いわゆるインバウンド型モデルがとられることが多い。それに対し当社は、スタートアップ自身が技術や事業アイデアを持ち込み、起業家が事業に参画していくアウトバンド型モデルで進めている」

注1:EIR(Entrepreneur In Residence)は、支援元企業に社員や業務委託として加わり、新事業の立ち上げや起業の準備を行うアントラプレナー(起業家)、およびその仕組みのこと

写真1:NEC X President & CEOの井原成人氏
図1:NEC X事業開発の特徴(出典:NEC)
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ドローンから被災者を30分以内に半径50m精度で特定

 今回発表されたFlyhoundは、NEC-Xが9件目に着手した新事業である。NEC欧州研究所が開発した技術と事業仮説を基に、「行方不明者や被災者を捜索する際に直面する最大の敵は時間である」(Flyhound CEO 兼Co-Founderのマニー・セネグリア〈Manny Cerniglia〉氏、写真2)というコンセプトを打ち出してプロジェクトが発足した。

 その後、EIRが決まって事業体制が固まると、Flyhoundのチームは複数の公的機関を含むさまざまな組織へインタビューを行ってニーズや事例を集約しながらソリューションを開発。実証実験で有効性を確認して完成させた。

写真2:Flyhound CEO 兼 Co-Founder マニー・セネグリア氏

 Flyhoundのソリューションでは、NEC欧州研究所が開発した被災者捜索・救出ドローン「SARDO」を活用する。ドローンによって行方不明者や災害被災者の携帯端末からのセルラー信号(注2)に三角測量(注3)を行って正確な位置を特定し、捜索エリアのデジタル地図上でリアルタイムに表示する(写真3・4)。

注2:セルラー信号とは、基地局と携帯電話を接続する際の同期・認証や音声、データ通信に用いられる無線信号
注3:三角測量とは、三角形を用いて測量点の位置を割り出す測量手法。任意の2点間を結ぶ線の両端から測定したい点までの角度を測定し、線の長さと両端の角度から決定される。

写真3:ドローン(市販品)のコントローラーに表示された位置情報のイメージ(出典:NEC)
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写真4:ドローンに搭載したFlyhoundモジュール(出典:米NEC X)
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●Next:公共安全やビジネス活用も視野に入れるFlyhoundと、NEC Xの今後の計画

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