[市場動向]
メタルワンと日本IBM、自動車鋼板サプライチェーン全体のデータ活用基盤「Metal X」を構築
2023年3月31日(金)IT Leaders編集部
鉄鋼総合商社のメタルワンと日本IBMは2023年3月30日、自動車鋼板のサプライチェーン全体でデータをシェアするためのプラットフォーム「Metal X」を構築したと発表した。自動車鋼板の流通においてデジタルトランスフォーメーション（DX）を推進し、持続可能なサプライチェーンを実現するとしている。2023年4月に、企業横断型のBOM情報を管理する「原単位連関表」を利用した鋼材所要量自動算出サービスをメタルワンが開始する。
メタルワンと日本IBMは協業により、自動車鋼板のサプライチェーン全体でデータをシェアするためのプラットフォーム「Metal X（メタルエックス）」を構築した。
メタルワンは、国内外に108カ所の拠点・事業会社を持ち、世界中に事業を展開している鉄鋼総合商社。自動車や電機産業向けの薄板をはじめ、建材、容器、鋼製家具向けなど、各種の鋼材を取り扱う。なかでも自動車鋼板は、自動車メーカー向け製品の供給と各種加工を手がけ、ジャストインタイムのデリバリーでサプライチェーンの構築に貢献してきたという。
両社はMetal Xを通じて、自動車鋼板の流通においてデジタルトランスフォーメーション（DX）を推進し、持続可能なサプライチェーンを実現するとしている。最初の取り組みとして、メタルワンが2023年4月に企業横断型のBOM情報を管理する「原単位連関表」を利用した鋼材所要量自動算出サービスを開始する。
図1：自動車鋼板サプライチェーン向けデジタル基盤「Metal X」の概要（出典：メタルワン、日本IBM）拡大画像表示
Metal Xは、自動車鋼板流通に関わるサプライチェーン企業を1つの企業体（バーチャルエンタープライズ）と見立て、企業間で同じシステムを使用しデータをシェアすることで、企業間コミュニケーションとオペレーションを効率化・円滑化するデジタルプラットフォームである（図1）。
Metal Xでは、自動車部品から鋼材までの部品表（BOM: Bill of Materials）情報を保持し、自動車メーカーの生産計画に基づいて、高炉メーカーへの発注に必要となる鋼材の所要量を自動で算出する。
また、日々の配送を自動車メーカー、部品メーカー、コイルセンター、商社が同時に管理できる共通納期管理ツールも提供予定であり、将来的には、鋼材から自動車部品ができる工程における温室効果ガス（GHG: Greenhouse Gas）排出量を可視化し、サプライチェーン全体を通してGHG排出量が管理できるサービスを提供予定である。
Metal Xを利用することにより、ユーザーは市場の変動に対して迅速に対応しながら、鋼材供給の安定化・最適化を図れるようになるとしている。将来的にはAIなどを活用し、個社単位ではなくサプライチェーン全体でGHG排出量削減ポイントを見つけ出し、鉄鋼新素材と新エネルギーへの切り替えや、納期調整や共同配送による物流の見直しなどの改善アクションをレコメンデーションするとしている。これにより、カーボンニュートラルにも貢献する。
さらに、メタルワン以外の商社にもMetal Xを広く利用してもらい、オープンに共創するとしている。自動車鋼板流通全体でのDX推進による業界の変革や、人材不足をはじめとした社会課題への解決にも貢献していくとしている。
「自動車業界は、大量生産からマスカスタマイゼーションへの移行に伴い、新素材や新技術、新たな調達手法を積極的に採用している。自動車鋼板流通も、アジリティ（俊敏性）を高める必要がある。また、世界的なパンデミックや半導体不足などによる生産変動に対応できるレジリエンス（強靭性）の担保と、カーボンニュートラルの実現に貢献できる持続可能なサプライチェーンが求められている」（両社）
