竹中工務店(本社:大阪市中央区)は2024年7月30日、同社の建設現場において実施したデータ通信網の完全無線化を図る実証実験の結果と発表した。衛星ブロードバンドサービス「Starlink」の採用などの工夫を施し、データ通信網の構築にかかる時間を約80%削減したという。
竹中工務店は、事業のデジタルトランスフォーメーション(DX)推進の一環で、建設現場のデータ通信網の完全無線化に取り組んでいる。
今日の建設現場では施工ロボットや現場管理アプリなどのIT機器群を接続するインターネット通信網が必須である。同社によると、現場外からの光ファイバケーブル配線、現場内でのLANケーブル配線、現場内各フロアでの無線LAN基地局設置のそれぞれに要する労力や時間が課題だったという。
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そこで、有線ケーブル配線を不要にし、無線LAN基地局数と設置の手間を減らして建設現場におけるデータ通信網の完全無線化を図ることにした。衛星ブロードバンドサービス「Starlink(スターリンク)」の採用などの工夫を施し、同社が行った実証実験の結果によると、データ通信網構築にかかる時間を約80%削減したという(図1)。
実証実験は、同社が設計・施工する札幌市中央区の建設現場「アクサ札幌PJ新築工事(仮称)」において行われた。3つの実施項目の内容と効果は以下のとおりである。
- 米SpaceXの衛星ブロードバンドサービス「Starlink」を採用し、同アンテナを建物屋上に設置して建設現場内に無線インターネット回線を導入。これにより、外部からの光ファイバケーブルの配線を不要にした。
- パナソニック システムネットワークス開発研究所の60GHz無線通信装置「ecdi」によって建設建物フロア間の無線ネットワークを構築。建設現場内での有線LANケーブルの配線や仮線(ケーブルの盛り替え)作業を不要にした。ネットワーク配備に要するする時間は約30分と、従来の2分の1程度になった。
- PHS周波数帯を利用するプライベートLTEの「sXGP」によって、各フロア内の広域無線ネットワークを構築。免許不要でプライベートネットワークを構築可能で、基地局数の削減と設置作業負荷の軽減を図った。ネットワーク構築時間は約20分、設置数は2基と、いずれも従来の10分の1程度になった。
竹中工務店によれば、完全無線化により、建築面積5000㎡、20階建、利用期間2年を想定したケースにおける通信網構築コストを30%程度削減できるという。また、工事の進捗に伴って発生するケーブル仮線作業の削減や断線事故の防止にも寄与するとしている。