製品そのもの以上に、製品に付随するサービスや体験が重視されるようになり、顧客一人ひとりの嗜好が反映されたパーソナライゼーションが欠かせない施策となって久しい。一方、労働人口の減少を見据え、コンテンツの制作や効果検証といったサイクルの効率化・自動化も急務となっている。こうした課題に対し、アドビは「コンテンツサプライチェーン」の考え方を基に、データとコンテンツを組み合わせた顧客体験の設計を提唱している。生成AIがその実現のカギを握るという。同社デジタルエクスペリエンス事業本部の阿部成行氏に話を聞いた。
よりよい顧客体験の提供は人海戦術からデジタルへ
日本企業の国際競争力低下が各所で問題視されている。米アドビ(Adobe)日本法人のデジタルエクスペリエンス事業本部で、デジタルストラテジーグループ プリンシパル ビジネスデベロップメントマネージャーを務める阿部成行氏(写真1)は、問題の背景について、顧客体験(Customer Experience)の視点から次のように分析する。

まず、「よいものを作れば売れる」という考え方に固執している日本企業が、いまだに少なくないと指摘。製品の性能や機能が全般的に向上している中で、顧客は製品の性能・機能の違いよりも、顧客が実際に受け取って感じる価値としてのサービスや体験を求めていることを、企業は改めて認識する必要があると話す。
一方、この変化を理解し、顧客体験を重視する企業も確実に増えている。ここで問題となるのがデジタル化の遅れである。これまで賞賛されてきた日本のサービス品質は、人がふんだんに手間暇をかけたうえに成り立っているものが多いと阿部氏。よりよい体験を提供するために、人手に頼っていては、今後さらに深刻になる労働人口の減少によって立ちゆかなくなり、企業の成長は止まってしまうと警告する。
「企業はこれまで、顧客との密なコミュニケーションを軸にした人海戦術によって売り上げを伸ばしてきました。ですが、例えば現在1兆円の売り上げ規模の大企業は、同じ方法で人員を増やしても、将来売り上げを2兆円に拡大することはできないことを分かっています。そこで、顧客とのやりとりを含めた接点を、人手に頼らずに実現するためにはどうすればよいかを真剣に考え始めているのです」(阿部氏)
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