日立製作所は2025年3月14日、製造業に向けて、生成AI技術を用いて調達先の製造拠点を推定する「ディープインサイト推定技術」を開発したと発表した。自然災害やパンデミックなどに対するサプライチェーンの強靭化を支援する。部品の型名、素材、供給元の企業名などの部品供給情報と、Webサイトで一般に公開されている企業情報などを生成AIに入力することで製造拠点を推定する。日立グループ内で検証したところ、85%を超える精度で推定できることを実証した。
日立製作所は、製造業に向けて、生成AI技術を用いて調達先の製造拠点を推定する「ディープインサイト推定技術」を開発した。部品の型名、素材、供給元の企業名などの部品供給情報と、Webサイトで一般に公開されている企業情報などを生成AIに入力することで製造拠点を推定する。自然災害やパンデミックなどに対するサプライチェーンの強靭化を支援する(図1)。

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「近年、自然災害や地政学的な紛争など世界情勢の不確実性が高まっている。特に多数の調達先を抱える製造業ではサプライチェーンのリスク管理が重要になっている」(日立)。こうした背景から同社は、サプライチェーンに影響を与える要素をデジタルデータとして観測・分析し、リスクの予兆を早期に発見・対応する取り組みを進めてきた。
「従来、調達先の製造拠点を明らかにすることは困難だった。地震や台風などの部品供給リスク事象が発生した際は、人手でこれらの情報を収集し、絞り込んでいた」(同社)。今回日立が開発した技術はこの作業の負荷を軽減する。グループ内で取り扱っている複数製品に対して検証したところ、85%を超える精度で調達先の製造拠点を推定できることを実証したという(図2)。

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検証ではまず、調達時の契約情報から得た所在地や部品情報を、製品を識別・分類・管理する際に使う製品コード体系を用いて製品コードや付属情報に変換した。次に、生成AIを用いて、各社のコーポレートサイトやISO認証情報、地図情報など非定型化のオープンデータから製造拠点の候補となる情報を抽出した。これらの情報を使って作成した中間リストに、一貫性や正確性を保証するための処理を加えることで、調達先の製造拠点を、緯度と経度のレベルで高精度に推定する。
今後のユースケースとして、地震発生時に揺れが大きいと予想される場所や、台風や台風に伴う河川氾濫の予測情報、パンデミックや地政学のニュースなどと重ね合わせることで、調達先の製造拠点の中からサプライチェーンリスクのある拠点を抽出可能になるとしている。これにより、在庫の積み増し、代替調達先の調査、納期遅延に及ぼす影響の評価などが可能になる。