矢野経済研究所は2025年5月26日、国内の衛星データ活用サービス市場における規模の推移と予測を発表した。2023年度は、前年度比13.0%増の182億円だった。2024年度も衛星データの利用拡大や宇宙関連ビジネス強化の流れを追い風に市場の成長が継続し、同11.0%増の202億円を見込む。
矢野経済研究所は、国内の衛星データ活用サービス市場における規模の推移と予測を公表した。調査にあたって同市場を「衛星データ・画像の販売、衛星データ・画像の分析・解析、コンサルティングなどのサービス」と定義している。2024年12月~2025年4月の期間、同市場の製品・サービスベンダーを対象に直接面談、電話調査、文献調査を併用して調査を実施した。

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2023年度の市場(事業者売上高ベース)は、前年度比13.0%増の182億円だった(図1)。矢野経済研究所によると、コロナ禍によるプロジェクトの保留・見合わせが一段落し、予定していたプロジェクトの再稼働が追い風となって主要ベンダーにおける関連売上高が好調に推移した。需要家サイドでの人手不足の影響や業務効率化に向けた取り組みも進展し、衛星データ活用サービスの採用が増えているという。
2024年度は、有力な宇宙ベンチャー企業が好調で、大手ITベンダーの衛星データ活用サービスの取り組みも堅調に推移する見込みという。また、JAXA戦略宇宙基金に牽引される形で、周辺領域における衛星データ活用に関わるPoCが進展し、市場は引き続き成長するという。2024年度の衛星データ活用サービス国内市場は、同11.0%増の202億円を予測している。
「従来、人工衛星から得られる画像や各種データは利用料(販売価格)が高額で、データ品質面や機能面での限界もあり、需要先は限定的だった。近年では利用料の低廉化が進み、かつ収集データの多様化(光学衛星画像データ、合成開口レーダー衛星データ、各種センサーデータなど)やデータ品質/解像度の向上などが進み従来の官公庁・自治体需要(官需)だけでなく民間需要(民需)の開拓が進んでいる」(同社)
矢野経済研究所は、衛星データ・画像の活用領域として以下を挙げている。
- 行政の一般業務(土地測量/家屋異動判読、耕作放棄地確認など)
- 防災関連業務、社会インフラ監視、農林水産・畜産(圃場モニタリング業務など)
- 自然・地理/環境計測、金融(保険額算定支援、先物市場向けデータなど)
- 建設・土木(地盤変動監視、建設進捗管理、建機・重機の自動運転支援など)
- 物流(海運、陸運などでの位置情報・トラッキングデータなど)
同社によると、衛星データ活用ビジネスは2000年頃まではほぼ官需に依存していたが、2000年代以降、徐々に民需が拡大しているという。ただし、2024年度の衛星データ活用サービス市場全体の9割弱が官需で占められ、市場の中心的な存在となっている。同社は、今後の民需の伸びによって、2030年度の官需比率は8割ほどに低下すると予測している。
また、生成AIをはじめとしたAI活用シーンの広がりは、人工衛星から得られる画像や各種データ自体の価値を高める効果があると説明。結果として、衛星データ活用ビジネスの追い風となっている。
「特に、民需向け衛星データ活用では、画像やデータと連動したAI活用での期待が大きい。例えば、社会インフラ監視において衛星画像による劣化診断が可能になれば、従来の目視点検による点検モデルを変えるサービスになる。目視点検といった人手による点検から、衛星画像解析点検による効率化の実現が期待される」(矢野経済研究所)