[市場動向]
日立、AIモデル同士の会話から最適なチームを自動編成するマルチエージェント技術を開発
2026年1月27日(火)日川 佳三、河原 潤(IT Leaders編集部)
日立製作所は2026年1月26日、「会話ベースAIオーケストレーション技術」を開発したと発表した。複数のAIモデルを連携させて複雑なタスクを解くマルチエージェントシステムにおいて、AI同士の会話から互いの相性を特定し、高パフォーマンスなAIチームを自動編成する技術である。内部構造が不明なブラックボックス型のAIも含め、現場のニーズに応じた最適な組み合わせを迅速に抽出できるとしている。検証では、自動編成したチームは無作為に選ばれたチームよりも最大で13%高い正答率を記録したという。
日立製作所の「会話ベースAIオーケストレーション技術」は、複数のAIモデルを連携させて複雑なタスクを解くマルチエージェントシステムにおいて、業務要件に基づいて最適なAIチームを自動で編成する技術である(図1)。
AIモデル同士に自律的な会話を行わせて、互いの協調性や専門性といった「相性」を数値化して、最適なチームを編成する。会話の整合性からモデル間の関係性を算出・グラフ化することで、現場の課題に即したAIモデルの組み合わせを自動で抽出するというもの。
図1:パフォーマンスの高いAIチームを自動で編成する「会話ベースAIオーケストレーション技術」の概要(出典:日立製作所)拡大画像表示
日立は開発の背景として、現在、社会インフラや産業分野では、現場ごとに専門的かつ複雑な課題を抱えていて、単一の巨大な大規模言語モデル(LLM)のみでは、現場ごとの業務要件に対応することが難しく、特定の専門分野に長けた複数の小規模言語モデル(SLM)を組み合わせるマルチエージェントへとシフトしつつあることを挙げる。
しかし、世界中で無数に開発されるAIモデルの中から、特定の業務課題に対してどの組み合わせが最適かを見極めるのに、各モデルの特性を熟知した専門家による膨大な試行錯誤が必要になる。「特に、API経由で利用する商用モデルなどは内部構造が公開されていない“ブラックボックスAI”である。そのため、事前に最適な組み合わせを見極めることが困難という課題があった」(同社)。
これに対し、今回開発した技術は、従来の「タスク要件から役割を決めるトップダウン型ではなく、AIモデルの出力(会話)のみから相性を判定するボトムアップ型)」のアプローチをとる。具体的には、会話の「意味的整合性の軌跡」から特徴量を算出し、モデル間の関係性を「言語モデルグラフ」として構造化する。これにより、多様なベンダーのAIモデルを公平に評価し、最適なチームを編成できるという。
また、AIモデル間の会話のみに基づいて相性を判定するため、モデルの内部構造(学習データやパラメータ)や性能評価データを必要としない。API経由での利用に限られた商用モデルやオープンソースのモデルであっても、応答内容や協調の度合いから評価が可能。利用可能なAIモデルが限定的な場合でも、現場課題に即したチーム編成を提案することができる。
日立が行った検証では、数学や医療に特化したモデルと汎用モデルを混在させた環境において、自動編成されたチームは無作為なチームよりも正答率が最大で13%向上。専門家が仕様に基づいて編成したチームに匹敵する性能を確認したという。
日立は、同技術を自社のAIサービス群「HMAX」を通じて、鉄道、エネルギー、製造、医療などの現場へ展開していく方針である。「多様なAIモデルと現場知見を融合させることで、迅速な意思決定や業務効率化を支援し、社会インフラの高度化に貢献する」としている。
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