インテルは2008年10月8日、企業で使用するクライアントPCのセキュリティと自動保守性を高めるPC向け運用管理プラットフォーム 「インテル vPro テクノロジー」(以下、vPro)の機能強化版を発表した。新版の特徴は、ファイアウオール越しにPCを遠隔操作可能、電源オフのPCを管理できる、の2点。オフィス内にとどまらず、社外のモバイルPCも含めた管理の手間を軽減できる。
プラットフォームの特徴
「OSが起動しなくなったPCを遠隔で補修したい」、「数千台ある社内のPCを集中管理したい」。企業のパソコン管理者が持つ、こんなニーズに応えるのがvProである。プロセサコアを複数備えたマルチコア・プロセサ、チップセット、管理用ファームウエアで構成される。
vProは大きく2つの機能を提供する。1つは、管理機能やセキュリティ機能をハードウエアに実装した「AMT(アクティブ・マネジメント・テクノロジ)」。もう1つがパソコン本体のOSとは別に稼働するvPro専用OS、「バーチャライゼーションテクノロジ(VT)」だ。
メリットと課題
今回のvProは第3代目。AMTはリリース5.0になり、VPNやファイアウオールの外からのPC管理が可能になった。電源がオフのPCを、遠隔地から起動する「遠隔アラート機能」も搭載した。一方のVTはvProが提供する仮想マシンモニターによってPC本来のOSと同時稼働する。システム管理者はVTを介して本来のOSにアクセスしてアップデートしたり、ウィルス対策を施したりできる。さらに本来のOSが行う外部との通信の監視や、サーバー側のアプリケーションをクライアントPCに転送して実行することも可能だ。
後者はサーバー側の画面を表示するだけのシンクライアントと異なり、クライアントPCの能力を活用でき、サーバー側の負荷を軽減するメリットがある。こうした機能をインテルは「ダイナミック・バーチャル・クライアント」と呼んでいる。さらに一定のセキュリティ要件を満たさないPCのLANへの接続を制限する機能もある。
課題は、vPro搭載PCがどの程度の価格で登場するか。国内外のメーカー8社が近く製品を出荷する見通しだが、非搭載のPCに比べて割高感が強いといくら便利でも普及は望めない。
想定ユーザー
社内外に多数のPCを抱える大企業ユーザー向けが中心。実際、運用コストやセキュリティの向上などメリットは多い。インテルは中堅中小市場にも大きな関心を寄せている。米インテルのグレゴリー・ブライアント デジタル・エンタープライズ事業本部副社長は、「IT選任者がいない企業にこそ、vProを使って欲しい。運用管理は専門業者に任せればいい」と語る。
グレゴリー・ブライアント氏
インテルコーポレーション
デジタル・エンタープライズ
事業本部副社長兼
デジタルオフィス事業部長
「地方に小さな事業所を構える企業や、ITに詳しい人材が不足する中小企業においてvProは真価を発揮する。ネットワーク環境や起動状態を問わず、統合的かつ計画的にPCを管理できるからだ。そのためにも新たな機能の優位性を市場に訴求していく」