プライベートクラウドを指向する企業にとって、運用管理/監視の機能を備え、ハード/ソフトの動作確認も終えているクラウドアプライアンスは採用を検討する価値が十分にある。一方、「垂直統合型」の製品ということから、ベンダーによる囲い込みを懸念する声も聞こえてくる。パート2では、プライベートクラウドの現状と、クラウドアプライアンスの価値について見ていく。
注目度が高まりつつあるプライベートクラウド
2009年以降、「クラウド」を冠する製品やサービスが続々と登場している。クラウドコンピューティングは当初、「所有から利用へ」という文脈で主にパブリッククラウドの側面で注目を集めていたが、最近では自社所有型の「プライベートクラウド」に対する関心が高まっている。国内には「クラウド=プライベートクラウド」と認識しているユーザー企業も少なからずいるようだ。
図2-1にプライベートクラウドを構成する主要な要素と、期待できる価値を整理した。周知の通り、プライベートクラウドは物理的なプロセサやメモリー、ストレージなどを仮想化したシステムインフラが基盤になっている(図2-1のCの部分)。そして仮想化したITリソースを集約管理し、プロビジョニングによって必要に応じたリソース使用を実現する。さらに、リソースの使用状況を測るメータリングに基づく課金の仕組みや、システム開発者/運用者が自ら必要なリソースを“調達”するためのセルフポータル機能を備える。
こうした仕組みを持つことではじめて、新システム用の開発環境や実行環境を数時間で準備したり、システムに割り当てるリソースを需要に応じて柔軟かつ俊敏に増減したりできる。リソースの使用量などに応じた利用部門への課金といったプライベートクラウドならではの価値も得られる。
国内ユーザーの多くはまだ仮想サーバーのレベル
こうした価値の獲得を目指し、プライベートクラウドの構築を目指すユーザー企業が国内にもみられるようになってきた。だが、その多くはまだ、図2-1のBに示す仮想サーバーを整備する段階にとどまっているのが現状だ。それでもハードウェアのコスト削減効果は期待できるが、前述したような利用部門への価値は提供できない。むしろ運用の手間が煩雑になって、利用部門に対するサービスレベルを低下させかねない。
なぜ、図2-1のCのレベルに達していないのか。そもそもプライベートクラウドの実現を目標に掲げながら、その実は仮想化によるサーバーの集約化・統合化を目指しているユーザー企業が多いこともあるが、技術力の問題も大きい。国内のユーザー企業で、複数ベンダーのハードとソフトや物理環境と仮想環境を組み合わせながら、プロビジョニングやメータリングの機能を自社で構築できるだけの技術を持っているIT部門はあまり多くない。
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