富士通は、CAD/CAM/CAEや部品表といった製造業向けソフト群を、2011年10月10月から順次、クラウド経由(SaaS形式)で提供する。設計データの画像処理などをクラウド側で実行し、シンクライアントで遠隔操作する仕組み。これにより、手元にワークステーションが要らなくなる。利用料金は、1ユーザーあたり月額数万円から数10万円。販売目標は、3年間で100億円。
サービス名称は「エンジニアリングクラウド」。サービス品目は2つ。(1)「エンジニアリング/SaaS」は、富士通の製造業向けPLMソフト群を、SaaS形式で提供する。2011年10月から、「PLEMIA M3」(設計情報管理ソフト)と「ECODUCE」(環境情報管理ソフト)を手始めに、順次提供する。(2)「エンジニアリングクラウド/PaaS」は、ユーザーの既存アプリケーションを富士通のデータセンターにコロケーションする。
システムのアーキテクチャは、ソフトウエアを富士通のデータセンターに配置し、ソフトのGUI画面をシンクライアント(画面情報端末)経由で遠隔操作する、というもの。設計データの画像処理をデータセンター側で実行するため、手元にワークステーション(OpenGLグラフィックス処理能力に注力したCAD用コンピュータ)を用意する必要がなくなる。専用のシンクライアント・ソフトとWebブラウザさえあれば、どこからでも設計データを操作できる。
高精細な画像データをネットワーク経由で軽快に表示/操作するための工夫として、転送データ量を低く抑えられる独自のシンクライアント技術「RVEC」を採用した。Windows標準のシンクライアント技術であるRDP(Remote Desktop Protocol)との比較では、同等のフレームレートで動画再生中の平均帯域消費量を、9.12Mビット/秒から0.93Mビット/秒へと約10分の1に削減できた、としている。
なお、RVECは、富士通研究所が開発した独自の画面情報端末プロトコル。転送データ量を抑えるための工夫として、静止画の圧縮フォーマットだけでなく、動画の圧縮フォーマット(MPEG)を併用する。画面の更新頻度に応じて動画領域と静止画領域の2つの領域に分類し、それぞれ異なるフォーマットでシンクライアントに転送する。これにより、画像の回転や移動など、画面を更新する頻度が高いケースにおいて、すべてを静止画として転送する従来技術と比べて、転送データ量を低く抑えられる。
写真1:エンジニアリングクラウドについて説明する、執行役員常務で産業ソリューションビジネスグループ長の森隆士氏