普段、CIOに関わる話題や、CIO育成に関する議論に触れることが多い。IFRSで関心の高まるCFO育成や、日本の製造業のコアでもあるCTO育成の話をそれほど耳にすることがないので、Googleで検索してみた。その結果、「CIO育成」が圧倒的に多いことが分かった。人材育成を否定するものではないが、CIO育成については扱いが過熱気味ではないかと思う。
CIO育成論の背景にあるもの
いわゆるCXO(Chief X Officer)は米国企業に多い経営の執行組織体制である。CEOのもとで各領域毎に経営責任者を任命し、執行に当たらせる仕組みだ。日本でも執行役員制度や委員会設置会社の導入とともに、CXOの呼称が多く用いられるようになった。
明らかなのは、経営執行の最高責任者であるCEOはもとより、すべてのCXOはそれぞれの役割を担っている執行役員であることだ。したがって役割としての人材像はあっても、明確な人材育成のキャリアパスを経て育ってきているわけではない。確かにCFOは財務や会計の経験者である場合が多く、CTOも技術開発などに携わっていた人が多い。であればCIOもシステム部門経験者から、多くが輩出されるはずである。なぜCIO育成論だけが突出して語られるのだろうか?
筆者の推論はこうである。1990年代初頭からCIO論が活発になり、CIOの不足や育成が話題になるようになってきた。背景にはそれまでシステム部門に求められていた役割とは異なる、経営に密着したシステムに対する強い要求がある。その大きな要素はインターネット技術によって社内部門間や社外がシームレスに繋がりだしたことだ。こういった視野を持たずに経験を積んできたシステム部門の人材には、CIOを委ねられる人材が少ないのではないかと思う。他のCXOに比べて、需要と供給のギャップが大きいのだ。
ビジネスリーダー=CIO
CIOやそれに準ずる人たちのキャリアを訊ねると、ビジネス部門から移ってきた人の割合が多いように感じる。もちろんシステム部門を長く経験された立派なCIOもいる。そこには1990年代の大きな節目に、役割をチェンジできた会社とできなかった会社の違いがあるように思う。
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