品揃えや機能の充実に加えて、品質も高まってきたことで、 商用ソフトとオープンソースソフトウェア(OSS)の垣根は下がる一方だ。 これは、企業ITを進化させるための道具の選択肢が広がったことを意味している。 パート4では、専門家の経験に基づくOSSの目利きのポイントなどを整理する。
商用ソフトウェアと比較した際、基幹系システムで既に稼働実績があるLinuxなどのオープンソースソフトウェア(OSS)については、信頼性を不安視する必要はほとんどないと言えよう。採用に当たって悩ましいのは、無数に登場する海のものとも山のものとも知れないOSSの個別評価だ。
パート3の鳥瞰図で取り上げた200種類以上のOSSはいずれも、国内ベンダーでOSSの動向を注視してきた複数の専門家のアドバイスに基づき、利用実績が多いOSSや注目されつつあるOSSを列挙したものだ。当然だが、1つひとつのOSSは誕生した時期から機能の成熟度にいたるまですべて異なる。
これらの選択肢から候補を挙げて、機能や可用性などの観点で自社の要件を満たしているかどうかを調べるのだが、それが必ずしも簡単ではない。Linuxのように公開情報が豊富なOSSは、商用ソフトと同じように、ベンダーから得た情報や採用システム事例を評価の材料にできる。ただし、それが可能なのはOSS全体のほんの一部である。大半は候補を挙げる段階で目利きが必要になる。
OSSの専門家が目利きのポイントとして一様に指摘するのは、開発コミュニティの円熟さだ。「(開発・利用・拡張の)エコシステムが確立されているかどうか」(NTTデータ 基盤システム事業本部の濵野賢一朗シニアエキスパート)は、OSSの品質向上のピッチや継続性に直結する。40万件以上のOSS開発プロジェクトの情報を集約した日本語版ポータルサイト「SourceForge.JP」を見て、「最新版のリリースから半年近くリビジョンアップなどの形跡がなければ注意したほうがよい」(PCIアイオスの関川誠 事業開発部部長)。「継続性に影響を及ぼしかねない問題をコミュニティが抱えている可能性がある」(同)からだ。
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