海外拠点の情報システムをどう整備するかは、グローバル展開する企業にとって重要なテーマである。そうしたニーズに対応しようとするベンダーの1社が、中堅から準大手クラスの製造業向けのERP製品を提供するインフォアジャパンだ。
インフォアジャパンは2013年8月初め、SASインスティテュートの営業統括本部長などを経て7月1日に就任した尾羽沢功社長のお披露目を兼ねた事業展開の説明会を開催。その中でERPスィートの最新バージョン、「Infor10x」を順次提供開始すると発表した。
「日本の製造業は円安をチャンスとみて海外展開を加速させています。そこに貢献できるのがInfor10x。大手のERPは高すぎることもあり、当社としては今後3年の間に売上高を倍増させる計画です」(尾羽沢社長)。実際にどこまで貢献できるのかはさておき、同社の戦略、製品はなかなかにユニークである。以下、説明会の内容を中心に見ていこう。
パッケージとは相反する「マイクロバーティカル」が特徴
周知の通りERPはSAP、Oracleという大手が君臨し、中堅企業向けに限ってみてもMicrosoftやIFS、国産のワークスアプリケーションズや富士通、東洋ビジネスエンジニアリングなど競合がひしめく分野。競争は熾烈だ。そこでインフォアが採る方策の1つが「マイクロバーティカル戦略」と呼ぶ、きめ細かな業種特化策である。
説明に立った同社アジア太平洋&日本担当プレジデントのティム・モイラン氏は、「当社の注力分野は製造業ですが、そこには機械や電機、食品・飲料など多様な業界があります。食品/飲料業界はさらに酒造、精肉、パンなど様々に分かれる。一口に製造業向け製品といっても、全く異なる業種であり、業態なのです。当社は、細かい粒度で個別の業界に最適化したシステムを提供します。それがマイクロバーティカル戦略です」と説明する。
つまり個々の企業の業務に適合するように、できるだけ個別最適のオーダーメイドに近づけるアプローチだ。しかし本来、ERP製品はレディーメイドであり、それが利点でもある。この点をどう捉えればいいのか。尾羽沢社長はこう説明する。
「マイクロバーティカル戦略には2つの面があります。1つはERP製品を自動車部品や食品製造など個別業種に特化させること。Infor10xはそうしやすいアーキテクチャです。しかし、それだけでは限界があることも確か。そこでもう1つ、個々の業種の詳細なナレッジを有するプリセールスやコンサルタントの採用、育成や、専門知識を持ったパートナー企業との協業を進めます」。
仮にそれができたとしても問題はある。海外企業と日本企業では、製造工程や原価管理などに対するニーズが異なることだ。米国製のERPパッケージを日本企業に合うようにできるのだろうか。
この点については「その通りですが、インフォア本社はアジア太平洋地域、とりわけ日本を重要視しています。すでに課題を解決できているかというとそうではありませんが、我々、日本法人がきっちりニーズを把握し、本社に的確に伝えて実現させたいと考えています」(同)と語る。
マイクロバーティカル戦略の一方で、Infor10xでは基本機能を大幅に強化した。他社のシステムやサービスとの連携・統合機能の強化、HTML5やクラウドなどのインターネット対応、モバイル対応を初めとする使い勝手の向上といったことである。「Infor10xの開発には、1000人の技術者と延べ1000万時間に及ぶ期間、そして5億ドルを投資しました。改善点は多岐にわたります。例えばユーザーインタフェースはクリエイティブを重視し、ゲーム業界や映画業界などの人材が開発に携わっています」。
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