[市場動向]

台頭するクラウド特化のサービス事業者、調達力の壁が崩壊

2014年2月21日(金)志度 昌宏(DIGITAL X編集長)

利用企業にとってクラウドが事業推進の武器になる一方、IT関連サービス業界では地殻変動が起きている。既存の大手システム・インテグレータがクラウド対応を急ぐのを尻目に、クラウド特化型の若いサービス事業者が利用企業の信頼を得始めている。ハードやソフト、人材など大型案件ほど資金力が必要になる“モノの時代”の慣習をクラウドが崩したからだ。

 米Amazonの「AWS(Amazon Web Services)」や米Microsoftの「Windows Azure」といったクラウドサービスにおいても、企業向けビジネスにおいては、システムインテグレーター(SIer)などのパートナー企業による利用支援が不可欠である。クラウド事業者は、有力なパートナー企業の開拓に力を入れている。

 パートナー開拓を担う複数の担当者が、「小規模だが実力のあるサービス事業者が台頭している。大規模案件でも、既存の大手インテグレーターなどからの競争提案にも打ち勝つケースが増えてきた」と実状を語る。同時に「大手インテグレーターほど、オンプレミスのビジネスもあり、取り組みのエンジンが掛かりづらい」と漏らす。

 彼らの声を裏付けるかのように、クラウドビジネスの先頭集団に属するサービス事業者の経営者らは、「クラウド時代になり、我々の技術力やノウハウといった価値が正当に評価されるようになってきた」と胸を張る。どういうことなのか。

リーンスタートが大手は苦手?

 クラウド特化型の新しいサービス事業者が台頭する最大の理由は、クラウドによりITインフラ環境の調達が容易になったことである。

 オンプレミスの案件では、利用年数に応じて見積もったハードやソフトを調達する必要がある。大規模案件になればなるほど初期投資も大型になるだけに、調達力すなわち企業としての資金力の有無が提案に臨むための条件になってくる。結果、新興企業は技術力やノウハウ面で長けていても、大手のサブコンとして設計のみ、開発のみといった参加にとどまっていた。

 これがクラウドであれば、必要な規模のITインフラを利用時間制で調達できる。ハード/ソフトをそろえるための資金力が欠けても、案件への参入障壁は大きく下がる(図1)。プログラマがクラウド環境を操作できる点も、彼らには追い風だ。利用企業にとって大きな価値をもたらすクラウドの調達形態は、ITサービス業界においては地殻変動を起こしている。

図1:クラウド特化のサービス事業者が台頭する背景と大手インテグレータの苦悩

 加えて、クラウド案件はリーンスタート、すなわち「小さく始め、大きく育てる」型の少額案件として提案を求められるケースが少なくない。だが、大手インテグレーターにすれば、少額案件は数をこなさなければならず事業効率が悪い。どうしても大型案件の受注に走る。新進企業のほうが小回りが効くだけに、案件が集中することになる。

 クラウドはまだ進化の過程にある。AWSなどのクラウドサービスは日々、その姿を変え、料金体系も変化する。クラウドを使いこなすための技術力・ノウハウを蓄積するには継続的に研究・調査し、実際に利用することが重要になっている。小規模案件を含め数をこなす新進企業と、大規模案件を求め実経験の機会を減らす大手の既存事業者。こうしたところに、クラウドベンダーのパートナー開拓担当者が漏らす実態の発生要因がある。

 一方で、クラウド特化のサービス事業者の中には、創業時の売り物だったアプリケーション開発部隊を縮小し、クラウドの運用を代行するMSP(Management Service Provider)に特化する戦略を打ち出す企業もある。「アプリケーションは利用企業が最も良く知っているはず」との判断だ。「高価なハードもソフトも購入したのだから、アプリケーションを含めて面倒見てほしい」といった“顧客企業の甘え”は、高価なハード/ソフトが存在しないクラウド環境では許されないだろう。

 以下では、クラウドベンダーも推す新進のサービス事業者を紹介する。

●Next:クラウド市場注目のサービスインテグレーターはここだ

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