[海外動向]

米IBM、PaaSの「BlueMix」を6月末には製品化、日欧などにも順次展開

2014年6月3日(火)志度 昌宏(DIGITAL X編集長)

米IBMは2014年6月1日(現地時間)、ベータ版であるPaaS(Platform as a Service)の「BlueMix」を、この6月末には製品版として提供することを、米フロリダ州オーランドでRational事業部が開催中の年次イベント「Innovate 2014」の基調講演において発表した。米国内に続き、欧州や日本にもBlueMixのためのデータセンターを開設する計画だ。

 BlueMixは、オープンソースのPaaS(Platform as a Service)のソフトウェア群である「CloudFoundry」を実行環境とする米IBM独自のPaaS。この2月からベータ版を一般公開してきた。一般的なアプリケーションだけでなく、モバイルアプリケーションを開発するための基盤として「モバイルファースト」の考え方を採り入れるほか、IBMのオンプレミス環境との連携サービスを強化しているのが特徴だ。

 同社が今春から提唱している「Composable Business」を実現するための開発・実行基盤でもある(関連記事『【Impact2014レポート(前編)】「Composable Business」を提唱、PaaS使ったビッグデータ活用を強調』)。Innovate 2014においても、独ボッシュや、米カリフォルニア州の公共鉄道であるBART(Bay Area Rapid Transit)、米GEキャピタルなどのベータ版ユーザーが登壇し、モバイルアプリケーションの開発効率や、既存メインフレームとのデータ連携、パートナー企業とのコラボレーション開発などにおける有効性を披露した。

米IBMのクラウドプラットフォームサービス担当のゼネラルマネジャーであるSteve Robinson氏米IBMのクラウドプラットフォームサービス担当のゼネラルマネジャーであるSteve Robinson氏
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 基調講演に登壇した米IBMのクラウドプラットフォームサービス担当のゼネラルマネジャーであるSteve Robinson氏は、「2月のベータ版公開時には、第3四半期や年内にも製品化は難しいと指摘されたが、計画の2倍のユーザーがベータテストに参加しフィードバックを与えてくれたことと、当社自身がDevOps(開発と運用の連携)に取り組んだことで、6月末の製品化が実現できた」と胸を張る(写真1)。

 加えて、オンプレミス環境との連携強化と、新たなコンポーネントサービスも発表した。オンプレミスとの連携強化では、同社メインフレーム上のIMSやCICSで管理しているデータや、独SAP製アプリケーションのデータを活用するアプリケーションのテストを仮想環境で実行し、問題がなければ本番環境に展開する仕組みや、ハイブリッドクラウド環境での開発状況を一元的にモニタリングしチーム間で情報共有を図るための仕組みを用意した。

 一方の新サービスでは、(1)プログラムに潜むセキュリティの脆弱性をテスト段階で発見する「AppScan」、(2)開発の進捗状況などをレポートする「Embeddable Reporting」、(3)複数のサービスの連携を可能にする「Workflow」、(4)プログラム開発・保守における変更箇所のビルドやデプロイを自動化する「Continuous Delivery Pipeline」を追加する(写真2)。

写真2:BlueMixに追加された4つの新サービス

 これまで提供されてきたサービスは、40種類。今後は、IBMが持つ製品や知見をベースにしたサービスに加え、サードパーティ製のサービスや、ユーザーなどが開発したサービスを他者に利用可能にするためのAPI(Application Programming Interface)の整備も推し進めるとしている。

 PaaS市場を巡っては、主要ベンダー間の競争が激しくなっている。ただし、IBMを含め多くがOSSをベースにしたりモバイルアプリケーション重視の 戦略を採るため、クラウド環境に特化したアプリケーション開発が主軸になっている。クラウド対応では買収に依存してきたIBMだが、ここに来て既存環境と の連携サービスの実現など、ハイブリッド環境を不可欠とする企業ユーザー市場で巻き返しを図るための戦略が明確になってきた。

 なお6月末に製品版を提供するのは米国内にあるBlueMix用データセンターから。その後に、欧州や日本を含むアジアパシフィックにもBlueMix用データセンターを開設する計画だ(写真3)。

写真3:BlueMix用データセンターの開設計画写真3:BlueMix用データセンターの開設計画
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