第4回から第7回では、最近のITを駆使してアフターサービスの仕組みを高度化するための手法を個々に見てきた。それぞれの説明の中で設計データを効率的に利用することが良いアフターサービスの確立に繋がることを述べてきたが、今一度設計とアフターサービスの関係について概観してみよう。
現在の製造業の一般的な事業構造では、アフターサービスは最下流に位置づけられている。商品企画・製品設計・製造・販売の各ステップを経て、最終顧客が製品を手にしたあとにスタートするのがアフターサービスだからだろう。この一連の流れの中では、アフターサービスと設計は互いに遠い存在であるように見える。
現実には、アフターサービスを効率化・高度化するために、設計業務で作成・利用している様々な情報が必要になる。アフターサービスで得られた知見を設計業務にフィードバックすることで、製品の機能や品質の改善が可能になる。以下では、いくつかの具体的な例を挙げながら、設計とアフターサービスが、いかに互いを補完しうるのかを説明する。
製品の故障診断に必要な設計情報
製品の利用者にとって、アフターサービスの一般的な入り口は、製品に対する問い合わせだろう。使用中の製品が不調を来したとき、まずはコールセンターやフィールドサービスで問診や故障診断が実施される。だが、すべての場合において初期問診・故障診断で原因箇所と対処方法が特定されるとは限らない。
筆者がこれまでヒアリングをしてきた企業の多くでは、フィールドサービスが故障原因や対処方法を現場で特定できないときは、設計者へ連絡して技術的な問い合わせをしている。設計の現場では、日中はフィールドサービスからの問い合わせに対応することで手一杯で、本来の設計作業に取りかかれるのは、それらが終了してからということも少なくない。
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