[市場動向]

米レッドハットと韓国サムスン電子の米国法人が企業向けモバイルで提携、IoTも視野に?!

2015年6月24日(水)田口 潤(IT Leaders編集部)

米レッドハットは、米ボストンで2015年6月23日〜26日にかけて開催中の年次カンファレンス「RED HAT SUMMIT2015」において、企業向けモバイルソリューションに関して韓国サムスン電子の米国法人と戦略提携したと発表した。日本市場とは全く無関係の提携だが、その分だけ彼我の差は開く一方かも知れない。

 企業向けモバイルソリューションに関する大手IT企業の提携と言えば、米Appleと米IBMのケースが筆頭格だろう。iPadやiPhoneといったAppleの製品をIBMのモバイル関連ソフトウェア製品やTwitterの情報も組み合わせて提供するというアピール度が高いペアリングである。2015年4月30日には、両社が日本郵政と手を組み、日本の高齢者に向けた生活サービスを提供する実証実験に着手するとも発表している(発表資料)。

写真:提携を発表するSEAのRobin Bienfait氏とレッドハットのCraig Muzilla氏写真:提携を発表するSEAのRobin Bienfait氏とレッドハットのCraig Muzilla氏
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 これに刺激を受けたのかどうか、6月23日にOSS(Open Source Software)ディストリビューター最大手である米レッドハットと韓国サムスン電子の米国法人(サムスン電子アメリカ:SEA)が、企業向けモバイルソリューションに関して戦略提携したと発表した(写真)。

 提携の骨子は、SEAが持つ様々なモバイル機器とレッドハットのミドルウェアやモバイル関連ソリューション、クラウドソフトウェアを組み合わせて、新たなソリューションを生み出していくこと。「モバイルファーストの波に乗り遅れるわけにはいかない。モバイルの成否はIaaS(Infrastructure as a Service)やPaaS(Platform as a Service)の事業にも影響する」と言わんばかりである。

 レッドハットが提携したのは、実際にはSEA傘下の米サムスンビジネスサービス(SBS)。SBSがレッドハットのソフトウェアを利用して、自社のスマートフォンや時計型ウェアラブルデバイス、タブレットやTVなどを駆使したソリューションを提供する。

 具体的には、(1)SBSはレッドハットのソフトウェアを使って、業界特化型の次世代モバイルアプリケーションを開発・提供する、(2)サムスンのハードウェアとレッドハットのソフトウェア上で動作するモバイルアプリケーションを開発するISV(Independent Software Vender:独立系ソフト会社)を両社が共同で増やし、エコシステムを形成する、(3)提携を通じて共同で市場開拓を図る、などだ。

 SEAの上級副社長兼チーフエンタープライズ・イノベーション・オフィサーであるRobin Bienfait氏は、レッドハットとの提携理由について「ソリューションが包括的であり、かつオープンソースの領域でトップベンダーであるためだ。共同でエコシステムを作っていける」と説明する。

 一方のレッドハットは米Appleと組みたかったかも知れないが、それが難しい中では最適な選択肢だったと言える。というのも、米調査会社のcomScoreによれば、米スマートフォン市場における2015年2月時点のサムスンのシェアは28.6%。首位を走るAppleの41.7%とは開きがあるが、ダントツの2位につけている(発表資料)。

 加えてサムスン電子は、「ARTIK」と呼ぶIoT(Internet of Things:モノのインターネット)専用チップセットを開発するなど、IoTに力を入れている。この点では、IoT向けにミドルウェアの強化を進めるレッドハットとは補完関係が成立する。

 レッドハットのApplication Platforms Business担当バイスプレジデントであるCraig Muzilla氏は、「今回の提携は、次世代のモバイルソリューションを提供するだけでなく、利用企業にモバイルを使ったイノベーションを可能にするものだ」と訴える。

 ただし、両社の提携は「当面、米国内に留まる」(米レッドハット)。従って日本市場とは無関係だが、米国ではApple-IBM連合と真っ向からぶつかる構図。両陣営の競争によって企業向けモバイルアプリケーションの開発や活用が加速される可能性は高い。この点、日本の大手IT企業の奮起が期待されるところだ。

 ただ、この提携が発表された「RED HAT SUMMIT2015」に参加しているレッドハット日本法人の幹部は、「日本にはSBSのような組織がないし、サムスン製品のシェアも米国ほどではない。米レッドハットとSEAの関係を日本市場に持ち込むことは困難」と話している。

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