[CIOのための「IT未来予測」将来を見据え、目前のITを評価せよ]

2016年2月15日(月)大和 敏彦

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　もちろん、品質や機能を継続的に進化させ、CXの価値を提供し続けられなくなると、ユーザーには乗り換えられてしまう。それを防ぐには、プラットフォーム上での機能や価値をオープンにし、自社での新機能の追加だけでなく、パートナー企業の力を借りた使い方の進化が重要になってくる。

　すなわち、API（Application Programming Interface）やSDK（Software Development Kit）の提供によるアプリケーションの開発支援と、その販売チャネルの確立、コンテンツの安心・安全な保存手段の提供などである。

IoTの世界でもプラットフォームが重要に

　第20回で取り上げた、IoT（Internet of Things:モノのインターネット）に向けた米GEによる具体的な取り組みであるIndustrial Internetでも、「Predix」と呼ぶPaaS（Platform as a Service）レイヤーのプラットフォームを中心に置いている。Predixを自社アプリケーションのプラットフォームとして活用することで、開発の迅速化や運用の標準化を実現する。航空機エンジンやガスタービンの“デジタルツイン”も、このPredixがプラットフォームになる（関連記事：Industry4.0やIndustrial Internet の根幹をなすCyber Physical Systemsの意義）。

　Predixでも、自社での活用だけでなく、業界団体IIC（Industrial Internet Consortium）を通じた社外展開を図っている。既に、米Exelon、米P&G、米ボーイング、米アメリカン航空が、発電設備の最適稼働や、設備の予兆診断、効率的生産、効率的な運航のためのアプリケーションをそれぞれ開発。日本企業では住宅設備機器メーカーのLIXILが、施工員の効率的手配のアプリケーションを開発しており、Predixのパートナーを日本でも募り始めたようである。

　こうしたプラットフォーム化は製品にも及ぶ。そこではIoTによる接続が必須になり、製品に搭載されるソフトウェアの価値が高まる。それにより、ハードウェアはソフトウェアの動作環境を提供するプラットフォームになる。そしてハードウェアの新しい機能は、ソフトウェアとの組み合わせによって実現させるようになる。

　その一例が、iPhone6Sの3Dタッチ機能や、米Tesla Motorsの車載用ソフトウェア「V7」だ。Teslaの場合、ネットワーク経由でV7にソフトウェアをアップグレードするだけで、車の流れに合わせた自動運転（オートステア）や、指示に従った車線変更（オートレーンチェンジ）、駐車スペースを自分で見つけての駐車（オートパーク）といった機能が利用できる。

　プラットフォームの重要性が高まるのに伴い、クラウドも伸びている。クラウドは、各社のサービスプラットフォームを実現するためのプラットフォームであり、各社のビジネスを支援しているからだ。第26回で紹介したように、AWS、Azure、IBMのSoftlayerはいずれも前年比70～100％の成長を続けている。

　例えばGEのPredixは、AWSをIaaS（Infrastructure as a Service）プラットフォームとして使っている。クラウドをインフラプラットフォームとして活用しながら、既存のデバイスプラットフォーム上にアプリケーションとしての機能を実現すれば、ビジネスモデルをより安く迅速に展開できる。こうした組み合わせが、新しいビジネスモデルの実現を加速させている。

クラウドをプラットフォームにするベンチャー企業が増加

　クラウドによる加速によって、「ユニコーン」と呼ばれる時価総額10億ドルを超える未上場企業が増加している。米CB Insightが発表した『The Unicorn List：Current Private Companies Valued At $1B and Above』には、150社がユニコーンの仲間入りをしている。図2に、そのトップ10を示す。

図2：巨額の投資を集める未上場ベンチャー
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