[CX(Customer Experience)デザインの基礎知識]

CXを設計するサービスデザインの手法とは【第2回】

2016年5月23日(月)飯塚 純也(ジェネシス・ジャパン コンサルティング本部 本部長 サービスデザイナー)

成熟する市場で企業が継続的に成長するために、先進企業はCX(Customer Experience:顧客体験)の最適化に取り組んでいます。第1回では、経営課題としてのCXの重要性や課題について整理しました。今回は、CXの最適化を具体的に進めるための取り組みとして注目を集める「サービスデザイン」の考え方についてご紹介します。

 前回、CX(Customer Experience:顧客体験)を考える際に「個別最適の総和は全体最適にはならない」と説明しました。Webサイトが使いやすい、コールセンターの応答が的確だ、リアル店舗の対応が素晴らしいなど、顧客へのタッチポイントごとに最適化した“部分最適”を進めても、決して“全体最適”にはならないのです。

 企業(ブランド)と顧客との関係性は“点”ではなく、購入前の見込客の段階から、検討、購入を経て、購入後のサポートに至るまでの“線”でとらえる必要があります。Webサイトが使いやすかったとしても、「コールセンターで不正確な対応をされた」というようなマイナスの体験があると、顧客のCXは低下してしまいます。つまり、部門ごとシステムごとの改善では、顧客ニーズに応えながらCXを高めていくための真の問題解決には至りません。

部分最適は顧客視点の欠如から生じる

 CS(Customer Satisfaction:顧客満足)向上に取り組んでおられる企業においては「弊社のコールセンターは素晴らしい」と胸を張られる方がいます。ここで「素晴らしい」というのは、「対応が早い」「正確だ」「顧客の状況に合わせた対応ができる」といった状態です。企業によっては、コールセンターの品質基準として「接続率」や、例えば20秒以内に95%以上の着信率などの「サービスレベルを指標に掲げていることでしょう。

 しかし、これらの指標は、サービスの機能を測る指標であって、対応の品質、すなわち顧客が「素晴らしい」と感じたかどうかを表すものではありません。当然、コールセンター以外のチャネル、つまりWebサイトやリアル店舗などのタッチポイントの評価が「素晴らしかった」かどうかは分かりません。そもそも取り扱っている商品にCXを下げる要因があるかもしれません。コールセンターの対応が素晴らしかったからといって、その企業(ブランド)のCXが高いとは限りません。

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