体育館や鉄塔、橋梁などの大規模建設に強みを持つ巴コーポレーションが、人的ミスに起因する部材の不具合を見つけ出す技術の実用化に向けて、実証実験を実施した。プロジェクトを支援した富士通システムズ・イーストが、2016年9月5日に発表した。
今回の実証実験は、同社が栃木県小山市に構える建設部材工場で実施したもの。この工場では、体育館の屋根などを効率的に施工する独自技術「トモエユニトラス」の部材などを製造している。
コンポーネント化された複数の部材を工場内で組み立てたり溶接したりして準備を整え、その後に建設現場に出荷して最終的な施工を行うのが通常の流れ。工場内での工程においてはこれまで、ヒューマンエラーに起因する組み立てミスや溶接時のズレなどが発生することがあった。部材が現場に到着した後で不具合が発覚すれば手戻りが発生し、結果的に工期に影響を与えることとなる。そうした課題を解決するシステムを検討する一環として、今回の実証実験が行われた。
組み立てや溶接を終えた「現物」と、元々3次元CADで設計している各コンポーネントのデータを組み合わせた「理想の姿」を比較し、誰もが目視で不具合を見つけやすくしたのが特徴だ。実際の作業としては、スマートフォンやタブレットのカメラで現物を撮影。その際、AR(拡張現実)技術の応用によって、理想形の3次元CADデータを半透過状態でディスプレイに表示するようにし、整合しない個所を直感的に把握できるように工夫を凝らした。
拡大画像表示
実験は2015年12月に開始し、2016年6月までの半年間実施した。これまで、ベテランでも見極めるのが難しかった軽微なズレなども検出できるようになるなどの効果が表れ、時間の観点では従来の10分の1まで診断作業を短縮できるようになった。
巴コーポレーションは、このシステムを自社のほかの工場にも導入し、特殊な形状をしていて、目視では不具合を見付けにくい部材のチェックに応用していく計画だ。
【プロジェクトの概要】 | |
ユーザー名 | 巴コーポレーション |
事業内容 | 建設業 |
導入システム | AR画像出力システム |
導入目的 | 建設部材の仕上がりチェック |
主な利用製品 | 「FUJITSU Software Interstage AR Processing Server」(富士通) |