2016年9月の3本:米IT大手5社がAI分野で提携/国内クラウド事業者3社がデータ保護強化で連携/米Yahoo!から5億件の個人情報流出
2016年10月4日(火)松岡 功(ジャーナリスト)
2016年9月のニュースから松岡功が選んだのは、「米IT大手5社がAIの健全な発展へ向けて提携」「国内クラウド事業者3社がデータ保護強化で連携」「米Yahoo!がサイバー攻撃により5億件の個人情報流出」の3本である。
米IT大手5社がAIの健全な発展へ向けて提携
Amazon.com、Googleおよび傘下のDeepMind、Facebook、IBM、Microsoftの米IT大手5社が2016年9月28日(米国時間)、人工知能(AI)に関して提携し、AI技術の健全な発展に向けて非営利団体「Partner on AI」を共同で設立すると発表した。AIによる人類への貢献や安全性に対する社会全般の認知を高めるとともに、同分野の研究機関と連携してベストプラクティスを共有するためだ(関連記事)。
AIについては「将来的に人間の職を奪うのではないか」「人間に危害を与えるのではないか」といった懸念がある。取り扱うビッグデータに関わるプライバシー問題が発生する可能性もある。こうした点についての不安を払拭すべく、Partner on AIでは取り組んでいくとしている。
そのために共同で調査研究を進め、ベストプラクティスを推奨し、研究成果をオープンなライセンスのもとで公開する。テーマとしては、倫理、公正性、透明性、プライバシー、相互運用性、人間とAIのコラボレーション、信頼性、技術の堅牢性などを挙げる。立ち上げ時のメンバーは5社だが、今後は他の企業や研究機関などに参加を呼びかけていくという。
[選択理由]
AIが社会にとって非常に重要な技術であることを象徴した動きだからだ。特に5社が共同で取り組むテーマとして、AIにおける最先端技術の研究開発というよりも、「AIがいかに人類に貢献し、安全であるかを知らしめる」いわば啓蒙活動に置いている点が興味深い。
AIの実利用で最先端を行く米国では、上述したような“AI脅威論”も高まっている。そこで、最先端技術の研究開発は引き続き個々のベンダーで推進しながらも、脅威論を払拭する活動では協力しようというのが、今回の動きになって表れたのだろう。ただ、主旨はごもっともだが、これだけのメンバーが揃うと、政治的な思惑も感じる。果たして誰が音頭を取っているか。そんな視点も持ちながらも、これを機会にAIのメリット/デメリットについて一層考えたいものである。
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