Software Defined(ソフトウェア定義)の進展に伴い、“DevOps(開発と運用の融合)”におけるDev(開発)への関心が高まいる一方だが、Ops(運用)におけるSoftware Defined化も進む。そのためのツールの1つがOSSの「StackStorm」。2016年3月に米ブロケード コミュニケーションズ システムズが買収し、同社独自のディストリビューションも始まっている。StackStormの価値や、ブロケードが同分野に乗り出す意味などを聞いた。
デジタルトランスフォーメーション(DX:デジタル変革)に向けて、企業活動を“アジャイル(俊敏さ)”に変える取り組みが始まっている。すべてを顧客起点に変える取り組みだとも言えるDXでは、顧客や市場の“気ままな”変化にも、より素早く対応できる必要があるからだ。そのために、ビッグデータを収集・分析し、そこから得られた洞察に基づき、製品/サービスを見直したりビジネスモデルを変革したりすべきだとされる。
こうしたシナリオにそって、各種のIT製品/サービスも、大量データを、よりリアルタイムに分析でき、対顧客向けアプリケーションを早期に開発/改修できる仕組みの実現に向けて機能の強化/開発が続く。各段階に著名なOSS(Open Source Software)も存在し、それらを核にしたエコシステムをいかに構築するかがITベンダーの争点にもなっている。
そんなOSS群の中にあって、システム運用の自動化のために開発されているのが「StackStorm」である。イベントドリブン型のワークフロー管理を可能にする。2016年3月に米ブロケード コミュニケーションズ システムズによる買収後も、同名でのOSSプロジェクトが続くが、ブロケード自身はStackStormをエンジンにした独自製品「Brocade Workflow Composer」の提供を始めている。同社でデータセンター、スイッチおよびオートメーション分野のプロダクト・マネジメント担当バイスプレジデントを務めるNabil Bukhari(ナビル・ブカーリ)氏に聞いた。
──ITベンダー各社が自社製品が必要な理由を「デジタルトランスフォーメーション(DX)」に求めている。だが、インフラストラクチャーに近い製品ほど、その関連性は分かりづらく、詳細を語るほどDXと離れていく。
CEOやCIOにすれば、「より多くのサービスをいかに素早く提供できるか」が課題であって、例えば米ブロケードの主力製品であるスイッチやルーターの運用がどうなっているかまでは気にしている余裕はない。一方で事業部門にすれば、現在の自社ITでは遅すぎると感じており、AWS(Amazon Web Services)やGCP(Google Cloud Platform)といったパブリッククラウドに頼ってしまうことになる。
企業のデジタル変革における主戦場は“アジャイル(俊敏さ)”であり、これに応えるテクノロジーは自動化しかない。企業各社も、自社プロセスの自動化が重要なことには気づいている。ただ、どこから、どのように始めれば良いかが分からないうえに、人的資源もコストも掛けられないのが実状だろう。
ただ、ここで言う自動化は、業務の観点から見たもので、単にネットワークの運用の自動化というレベルに限定されない。当社の「Brocade Workflow Composer」は、ITインフラ全体の運用を対象に、クラウド事業者が実現しているのと同クラスの自動化を、より早く、より安価に導入できるようにする。
──企業のIT部門のクラウドベンダー化を促すということか。
企業のIT部門が、AWSやGoogleなどにはなれない。運用の自動化での取り組みでは、「米Facebookでは1万台のサーバーを1人で運用している」といった例が挙げられる。企業も、自動化により同様の方向には進むとは確信しているが、一般企業にとっての自動化技術は人減らしのためではく、今の限られた人員で、より多くのことに効率良く対応するためのツールだと認識することが重要だ。
例えばピザのお店を考えてほしい。事業の拡大に向けては、Webサイトの開設だけでなく、モバイルに対応したりFacebookなどのソーシャルメディアを活用したりなど、美味しいピザをただ作っているだけでは不十分だ。テクノロジーへの投資は避けられないし、テクノロジーに併せてモダナイゼーション(現代化、近代化)を図っていかなければならない。これは、どんな事業、どんな業務にも当てはまる。事業の拡大/変革のためにはツールの活用が有効だと言うことだ。