2020年の東京オリンピック・パラリンピックを控え、建設業界はかつてない繁忙期を迎えている。一方で労働人口の減少を止める手立てはなく、現場では人手不足の慢性化が深刻化している。政府が掲げる働き方改革にも沿う形でこの現状に対応するためには、生産性の向上が必須となる。建設現場における検査業務の生産性向上を音声認識技術で実現させようと2016年1月に発売されたのが、アドバンスト・メディアの「AmiVoiceスーパーインスペクター」。今回、適用業務を拡大し、建築現場の更なる生産性向上を支援する。
アドバンスト・メディアでは2016年1月に「スーパーインスペクター(建築仕上げ検査用)」を建設現場向けサービスの第一弾として発表、これまでに50社以上に導入してきた。2017年9月1日に発売される「AmiVoiceスーパーインスペクションプラットフォーム」は、適用範囲を配筋検査・配筋写真管理・仕上げ検査という3つの検査・管理業務に拡大したものとなっている。仕上げ検査は、従来のスーパーインスペクター(建築仕上げ検査用)をバージョンアップさせたもの。
サービスの中心に据えられているのが、様々な資料をデータ化したものを保存・共有するためのストレージサービス。これをハブに、配筋検査、配筋写真管理、仕上げ検査がワンストップで利用できるというものだ(図1)。
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配筋検査は、鉄筋コンクリート造建物の工事で、鉄筋が正しく配置されているかどうかを確認する検査のこと。通常、黒板やホワイトボード、図面、カメラを持って現場に赴き、検査箇所ごとに階・部位・符号・断面図などの設計図情報を黒板等に転記してその場所を撮影する。事務所にもどったら、撮影した写真データをエクセルで作った書類に貼りつけ、場所、指摘事項、是正後のコメントなどを手入力する。
配筋写真管理は、コンクリートを流し込むと鉄筋が見えなくなるため、鉄筋が正しく配置されているかを記録しておくのに必要な作業。意外と大変なのが、撮ってきた写真データと該当場所の紐づけ作業だという。写真の黒板に書いてある内容と照らし合わせる必要があるからだ。事務所で作成した写真データ入りのエクセルは、プリントアウトして保管されるため、マンション1棟分だけでも大変な紙の量となる。
仕上げ検査は、完成直前の物件の各戸を回り、壁や窓枠、木枠などに傷、汚れ、不具合がないかチェックする検査のこと。こちらも記入量が多く、70戸のマンションの場合、1度の検査で2千枚近くの書類が必要になることも。手書きの場合、字が汚い、読めないといった問題点もある。
AmiVoiceスーパーインスペクションプラットフォームを導入すると、これらの作業の大半が、スマートデバイスひとつで済むようになるという。
ストレージサービスに、図面や作業指示書、マニュアル、色見本等を格納しておく。作業者は現場でストレージサービスにアクセスし、施工図から検査したい配筋リストを選択、スマート端末のカメラで是正前、是正後の写真を撮影する。検査箇所の指摘事項や検査コメントは音声入力で記載できる。指摘事項と撮影した写真は自動で連結される。これで配筋検査は終了。
配筋写真管理の場合、検査する配筋リストを選択しておけば、写真撮影の際に黒板で示していた内容が自動で電子黒板として、撮影した写真と一緒に表示される。
仕上げ検査は、図面から点検・検査場所を選択して、室名・部位・指摘事項を音声で入力すれば、検査記録が作成できる。今回のバージョンアップでは、指摘事項の事前登録や選択機能が追加されたほか、写真の添付枚数が無制限になった。また、エクセル主出力も可能になった。
アドバンスト・メディアの検証では、70戸のマンション1棟を建設した際、配筋検査、配筋写真管理で240時間、仕上げ検査で225時間の削減に成功したとしている。
このような配筋検査や仕上げ検査について、大手ゼネコンなどではすでに対応ソフトを自社開発している場合が多いという。そういった企業でも、音声入力を付加するだけで生産性を向上できることから、外付けで利用できる建設業界向けの音声入力アプリケーションとなる建設業界向けボイスボード「AmiVoiceスーパーフロントエンダー」を提供開始した。
両サービスともiOSのみの対応。スーパーインスペクションプラットフォームの利用料金は、ストレージ30G含む基本利用料が月額2980円、配筋検査が月額1980円、配筋写真管理が月額1万4800円、仕上げ検査が月額9800円。スーパーフロントエンダーは月額基本料金が5万円から。エンジンモード数1―10で5万円、11―20が10万円。月額ライセンス料は要問合せ。いずれも初期費用は無料。