[イベントレポート]
SAP、Leonardoのマシンラーニング機構をアップデート、Google Cloudとの連携強化も発表
2017年11月20日(月)五味 明子(ITジャーナリスト/IT Leaders編集委員)
SAPは2017年11月14日、テクノロジカンファレンス「SAP TechEd 2017」において、マシンラーニングポートフォリオ「SAP Leonardo Machine Learning Foundation」アップデート、ならびにGoogle Cloudとの連携強化などを発表した。主要なトピックを報告する。
SAPは2017年11月14日(現地時間)、スペインのバルセロナで開催されたテクノロジカンファレンス「SAP TechEd 2017」において、同社のデジタルイノベーションブランド「SAP Leonardo」に含まれるマシンラーニングポートフォリオ「SAP Leonardo Machine Learning Foundation」のアップデートを発表した。OCRや多次元時系列予測などready-to-useなサービスや、顧客/パートナーが作成したモデルをトレーニングする機能などが含まれる。
キーノートで発表を行ったSAPのビョルン・ゲルケ(Bjorn Goerke)CTOは「Leonardoは顧客のデジタルトランスフォーメーションを支える存在であり、AIはその中でも重要な位置づけ。新しくなったLeonrado Machine Learning Foundationにより、顧客やパートナーはカスタマイズされたAIを手にすることができ、デジタルトランスフォーメーションをより速く実現することが可能になる」と語り、AIがすべての企業のイノベーションに欠かせない技術となっていることを強調している。
SAP LeonardoはIoT、マシンラーニング、ビッグデータ、データインテリジェンス、アナリティクス、ブロックチェーンという6つのアプリケーションカテゴリに分かれており、いずれもSAPのPaaS環境である「SAP Cloud Platform」上から提供される。単にクラウドからアプリケーション環境を提供するのではなく、SAPが得意とするデザインシンキング(https://it.impressbm.co.jp/articles/-/15013)をベースにソフトウェアとイノベーションを組み合わせることで、いままでにない発想でプロトタイプを作成し、迅速なデプロイ/デリバリを実現することを目指している。
SAP Leonardo Machine Learning FoundationはLeonardoのマシンラーニングポートフォリオであり、以下の特徴を備える。
- クラウドでデプロイされる
- すぐに使えるAPI/サービスが揃っている
- 顧客が自社のデータを使ってモデルを強化できる
- Google TensorFlowとインテグレーションできる
加えて、動画解析やレコメンデーションなどに必要なAPIサービスやGPU環境、さらにそれらのAPIを実装する複数のAIアプリケーションから構成されている。"Foundation"という名称は「AIを実装するための基本的(fundamental)なサービス群」という意味から付けられており、データサイエンティストなどのエキスパートでなくてもAI機能を容易に実装できる。
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今回のアップデートでは、あらかじめ定義されたAIサービスとしてOCRや多次元時系列予測などが利用できるようになったほか、事前に学習済みのモデルに対し顧客やパートナーが自社のデータを使って再学習させることが可能になる。発売前の製品の最適価格を予測したり、工場で必要なパーツやコンポーネントを速く正確に見分ける場合などに有効とされる。
SAP TechEd 2017ではこのほかにも、
- SAP HANAとサードパーティのシステムをつなぐ「SAP Data Hub」のアップデート
- Google Cloudとの連携強化
- ブロックチェーンイニシアティブ「SAP Blockchain Initiative」のメンバー拡張
- 「ABAP in SAP Cloud Platform」のプレビュー版提供開始
- iOS向けアプリケーション開発環境「SAP Cloud Platform SDK for iOS 2.0」のリリース
などが発表されている。この中でも最も注目されるのはGoogleとの連携強化で、キーノートにはGoogle CloudのCTOを務めるブライアン・スティーブンス(Brian Stevens)氏がゲストとして登壇し、Leonardo Machine Learning PlatformとTensorFlowとの統合や、HANA用に1.4TBの仮想マシン提供を含むGCP上でのSAPポートフォリオ提供枠の拡大、Google BigQueryとHANAおよびSAP Analytics Cloudの連携、「SAP Cloud Platform on GCP」のベータ提供などを明らかにしている。
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SAPはAWSやAzureとも連携する"マルチクラウドプラットフォーム"を打ち出しているが、「コンテナでのサービス提供が急速に拡大している以上、Kubernetesが主流の現在、Googleとの連携を強化していくのは自然な流れ」(ゲルケ氏)という背景もあり、今後はさらにGoogleとのパートナーシップが拡大するのは間違いなさそうだ。
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