目黒区とNTT東日本東京事業部は2019年8月28日、自治体業務にAI-OCR(光学文字認識)とRPA(ロボットによる業務自動化)を適用した実証実験の結果を発表した。「保育施設運営費支出業務」では、労働時間を9割以上削減できる見込みで、AI-OCRの読取り精度は99.9%となった。「研修評価シート集計業務」では、労働時間を3割以上削減できる見込みで、AI-OCRの読取り精度は98.2%となった。
目黒区とNTT東日本東京事業部は、2019年5月9日から2019年6月30日にかけて、目黒区の自治体業務をAI-OCRとRPAで自動化する実証実験を実施した。対象業務は、(1)「保育施設運営費支出」(保育課)と、(2)「研修評価シート集計」(人事課)の2業務である(図1)。AI-OCRソフトとして「DX Suite」(AI inside製)、RPAソフトとして「WinActor」(NTTアドバンステクノロジ製)を利用した。
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実証実験で得られたAI-OCRとRPAの効果は、以下の通り。
(1)の保育施設運営費支出業務では、紙帳票の児童名簿をAI-OCRでデジタル化し、電子稟議システムへの入力をRPAによって自動化した。
年間での稼働削減率は、9割を超える見込みとなった。AI-OCRの読取り精度は99.9%と、個別チェックを必要としないレベルの精度を確認した。
この他の効果としては、入力作業の正確性向上や、同じ稟議システムを使用する他業務への展開などが期待できる。
(2)の研修評価シート集計業務では、職員研修実施後の手書き評価シートをAI-OCRでデジタル化し、集計用Excelファイルへの入力をRPAによって自動化した。
年間での稼働削減率は、3割を超える見込みとなった(Excelファイルへの転記後に自由記述文章を整理、修正する時間を含めた場合)。Excelファイルへの転記で完結した場合、稼働削減率は96.3%に高まる。AI-OCRの読取り精度は、手書き文字も含めて98.2%と、十分実務に活用できることを確認した。
また、定性的な面では、「作業が集中する時期でも一定の品質を確保できる」、「自由記述欄が長文であっても正確に転記できる」といった効果が期待できる。