NECは2019年12月20日、量子アニーリングをソフトウェア処理によって実現するシミュレーテッドアニーリング(SA)マシンを、ベクトル型スーパーコンピュータ「SX-Aurora TSUBASA」を組み合わせて開発したと発表した。汎用PCサーバーと比べて300倍以上高速に解を導いたという。2020年第1四半期から、SAマシンを利用したサービスを開始する。まずは、ユーザーのデータをNECが預かって、NEC側でSAマシンを使って解を出すスタイルでサービスを提供する。
NECは以前から、組み合わせ最適化問題を高速に解く量子アニーリングマシンを開発している。量子回路を要素技術に用いたものとしては、2023年の実用化を目指して、独自開発の超伝導パラメトロン素子を使った量子アニーリングマシンを開発中である(関連記事:超伝導素子で量子アニーリングマシンを高速化、NECが優位性をアピール)。
超伝導パラメトロン素子を使った量子アニーリングマシンの特徴は、量子の重ね合わせ状態が持続する時間(量子コヒーレンシ時間)を長くとれること。量子回路を使う場合、処理を終えるまで量子の重ね合わせ状態が持続しないと、計算機として成り立たない。量子コヒーレンシ時間を長くできれば、問題を解く上で有利になる。
ベクトル型スパコンでアニーリングを高速にシミュレート
今回NECは、量子回路ではなく、一般的なコンピュータのデジタル回路を用いながらソフトウェア処理によって量子アニーリングをシミュレーションするタイプの、シミュレーテッド・アニーリング(SA)マシンを開発した(写真1)。性能は、10万量子ビットに相当するとしている。
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開発したSAマシンの最大の特徴は、ハードウェアにNECのベクトル型スーパーコンピュータ「SX-Aurora TSUBASA」を利用することである(関連記事:NEC、x86とベクトルプロセッサを組み合わせた新型スパコン「SX-Aurora TSUBASA」)。これにより、SAマシンとしての性能を高めている。
NEC社内の検証によると、開発したSAマシンの性能は、汎用PCサーバーと比べて300倍以上高速。実験では、100都市を巡る巡回セールスマン問題について、従来のSAマシンのアルゴリズムを汎用PCサーバー(Xeonプロセッサ)で実行した場合と、今回のSAマシンを使った場合とを比較した。
●Next:アニーリングマシンの利用方法と普及状況
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