独SAPは2020年2月4日(ドイツ現地時間)、基幹系アプリケーション「SAP ERP 6.0」のメインストリームメンテナンス期限を、2027年末まで延長すると発表した。その終了後のオプション延長保守サービスは2030年末まで提供するという。現行のERPアプリケーションである「SAP S/4HANA」への移行を進める企業にとっては、従来の期限だった2025年末から2年間の猶予期間が生じることになる。
“SAP2025年問題”と呼ばれてきた、「SAP ERP 6.0」から「SAP S/4HANA」へのマイグレーションのタイムリミットが、2025年末から2年後の2027年末に延長された(関連記事:企業活動にとってのITの役割とは何か─SAP2025年問題への対策を考える)
独SAPは2020年2月4日、S/4HANAの保守サービスに関する2040年末までのコミットメントの中で、SAP ERP 6.0を含む「SAP Business Suite 7 ソフトウェア コアアプリケーション」(注1)のメインストリームメンテナンスを2027年末まで提供し、それが終了後のオプション延長保守サービスを2030年末まで提供することを明らかにした。期限延長に伴う契約上の変更や追加料金は発生しないという。
注1:SAP Business Suite 7ソフトウェア コアアプリケーションには、SAP ERP 6.0、SAP Customer Relationship Management 7.0、SAP Supply Chain Management 7.0、SAP Supplier Relationship Management 7.0アプリケーション、SAP Business Suite powered by SAP HANAが含まれる
SAPのビジネスに大きく影響するこのサポート延長決定について、独SAPの共同CEO、クリスチャン・クライン(Christian Klein)氏は「当社の顧客は S/4HANAへの移行を進めており、このプラットフォームへの長期的なコミットメントを我々に期待している」と述べ、次のように説明している。
「米国のSAPユーザーグループ(ASUG:Americas' SAP Users' Group)が行った調査によれば、S/4HANAへの移行を計画していない顧客は存在しない。また、ドイツのユーザーグループ(DSAG:German-Speaking User Group)の調査では、顧客のS/4HANAへの投資は著しく増加している。SAPは、これらの結果と、選択肢を求める顧客の声を受け止め、S/4HANAがもたらす画期的なチャンスを存分に生かしてもらうため、顧客それぞれのペースとプロジェクトの複雑さを考慮した、より柔軟な選択肢を提供する」
また、同社の製品エンジニアリング担当統括役員であるトーマス・ザウアーエシッヒ(Thomas Saueressig)氏は、「S/4HANAは、顧客の将来を方向づけるアーキテクチャであり、プラットフォームだ。当社は顧客の成功と選択肢の提供にコミットしている。保守期間を長く設定することで、透明性と信頼性がさらに向上すると考えている」とコメントしている。
SAPによると、すでに1万3800社超の同社顧客がS/4HANAを利用しており、現在、数千社の顧客がS/4HANAの導入を進めているところだ。DSAGの調査によれば、49%超の顧客が今後3年以内でのS/4HANAへの移行を計画しているという。
●Next:移行難度を考えると2年間の延長でも厳しい企業も?
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