矢野経済研究所は2021年1月26日、国内の民間企業を対象に、ERP(統合基幹業務システム)、CRM(顧客関係管理)、SFA(営業支援)などの業務アプリケーションソフトウェアについて、SaaSの利用状況を調べた。次回システム更新時にSaaSを利用するという回答が急伸し、ERPのSaaS需要の高まりが明らかになった。
矢野経済研究所は、国内の民間企業を対象に、ERP(統合基幹業務システム)、CRM(顧客関係管理)、SFA(営業支援)などの業務アプリケーションソフトウェアについて、SaaSの利用状況を調べた(記事末の図1)。2020年7月から12月にかけて郵送によるアンケート調査を実施し、565件の回答を得た。
今回の調査では、ERPのシステム更新予定がある企業における「次回SaaS導入予定」という回答比率が大きく上昇した。財務・会計は、2018年の9.1%から2020年には18.2%と2倍に増えた。人事・給与は、2018年の9.0%から2020年には26.0%と約3倍近くに増えた。
現時点で、SaaSを利用している企業の比率は、財務・会計で3.4%、人事・給与で5.8%に留まる。しかし、SaaSの利用に対する関心は大きく高まっている。
矢野経済研究所によると、ERPのクラウド化は、これまでも着実に進展していた。こうした中、2014年~2018年の変化は緩やかだったものの、今回の調査で急伸した。背景について同社は、テレワークが普及する中で、クラウドサービスの需要が高まっている影響を挙げる。「ERPなどの業務ソフトウェアにおいても、利便性が高いSaaSに対するニーズが拡大している」(同社)。
なお、CRMとSFAは、次回SaaS導入予定の回答率が36.7%である。これは、調査した5つの分野(財務・会計、人事・給与、販売管理、生産管理/SCM、CRMとSFA)の中でもっとも高い。現在SaaSを利用している比率も32.9%に達しており、すでにSaaSの利用が一般的になっている。
今後は特に、企業による業務の違いが少ないため、SaaSで利用しやすいバックオフィス分野(財務・会計、人事・給与)でSaaSの利用が拡大する見込み。一方、販売管理と生産管理/SCMは、企業ごとに異なるシステムを利用する傾向が強く、SaaSの種類もまだ少ない。CRMとSFAは、引き続きSaaSが市場を牽引する。
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