清水建設は2022年1月17日、量子コンピューティング技術を用いてダンプトラックによる建設発生土の運搬計画を最適化するシミュレーション技術を構築したと発表した。建設発生土を現場から搬出場所まで順に運搬する複数のダンプトラックの走行ルートについて、道路の混雑具合や他車両の走行状況を踏まえ、タイムロスが最も少ない経路をリアルタイムに導出する。実現場の走行データを用いて検証した結果、走行台数を変えずに1日当たりの運搬量を約10%増やせることを確認した。
清水建設は、量子コンピューティング技術を用いてダンプトラックによる建設発生土の運搬計画を最適化するシミュレーション技術を構築した。建設発生土を現場から搬出場所まで順に運搬する複数のダンプトラックの走行ルートについて、道路の混雑具合や他車両の走行状況を踏まえ、タイムロスが最も少ない経路をリアルタイムに導出する。
実現場の走行データを用いて検証した結果、走行台数を変えずに1日あたりの運搬量を約10%増やせることを確認した。具体的には、国内の土木現場で稼働中の約40台のダンプトラックの運行データを用いて検証した。同現場のダンプトラックは、現場内で建設発生土を積載し、外部の搬出場所に運搬する往来を繰り返す。両地点を結ぶルートには一般道路と高速道路があり、これに加えて、待機場所を経由して現場に向かう3つの選択肢がある。これらの前提条件と運行データを量子コンピュータに取り込んで検証した。
今後は、ドライバーにルートを通知する方法などを検討し、今回開発した技術の実用化を目指す。また、建設発生土の積載や排出場所の数がより多い複雑な走行ルートでの運搬についても、同技術の適用を検討し、実用化していく。これにより、土木工事の生産性を高める考えである。
システムは、量子コンピューティングのクラウドサービス「MAGELLAN BLOCKS」(グルーヴノーツが提供)を使って開発した。利用時にはまず、出発地や到着地、両地点を結ぶルートの数などの前提条件を登録する。次に、ダンプトラックに搭載したGPSのログデータから、顕著な低速走行エリアや時間帯別の滞留量などを把握し、ルートを最適化する計算モデルを構築する。この計算モデルを量子コンピュータにインプットし、ダンプトラックの位置情報や待機場所の滞留台数、地図アプリから取得した各ルートの運行所要時間などのリアルタイム情報を取り込むことで、瞬時に最適ルートを導出する。
取り組みの背景として同社は、高速道路やトンネル、ダムなど、建設発生土の搬出入量が膨大な現場では、運搬作業の効率が工事全体の進捗を大きく左右することを挙げる。「複数の走行ルートがある場合、従来はダンプトラックごとに当日の走行ルートを固定して建設発生土を運搬していたが、この方法では渋滞状況の変動や突発的なトラブルに対応することが困難だった」という。
このため、道路の渋滞情報などを総合的に勘案した最適ルートをダンプトラックのドライバーにリアルタイムに通知し、運搬効率を向上させることが求められていた。「しかし、従来のコンピュータでは、最適ルートの導出には多くの時間がかかってしまうため、導出時間の縮減が課題になっていた。そこで、多くの情報を同時にまとめて計算できる量子コンピュータを活用することで、瞬時に最適ルートの導出を可能にする技術を開発した」(同社)。