[架け橋 by CIO Lounge]

社内のDX人材をどう育成するか─攻めと守りの両軸で考える

2023年6月20日(火)CIO Lounge

日本を代表する百戦錬磨のCIO/ITリーダー達が、一線を退いてもなお経営とITのあるべき姿に思いを馳せ、現役の経営陣や情報システム部門の悩み事を聞き、ディスカッションし、アドバイスを贈る──「CIO Lounge」はそんな腕利きの諸氏が集まるコミュニティである。本連載では、「企業の経営者とCIO/情報システム部門の架け橋」、そして「ユーザー企業とベンダー企業の架け橋」となる知見・助言をリレーコラム形式でお届けする。今回は、CIO Lounge正会員メンバーの藤城克也氏からのメッセージである。

 よくDX人材の育成について質問を受けます。それを考える上ではデジタルトランスフォーメーション(DX)の定義が重要です。大きく分けると、「守りのDX(プロセストランスフォーメーション)」と「攻めのDX(ビジネストランスフォーメーション)」があり、取り組み方やアプローチは大きく異なります。難易度にも差があるために、成功の確度にかなりの差があるというのが実際の事例から言えることです。

比較的短期に結果が出やすい「守りのDX」

 まず、守りのDXから考えましょう。これは簡単に言えば業務プロセスを見直したり標準化したりし、またRPAやAIといったツールを活用して業務を効率化するものです。これを担う人材の育成は比較的容易と考えます。情報システム部門が事業部門の人と必要な機能や価格感を協議したうえでツールを選定し、それを事業部門の方に活用してもらえばよいからです。ただし、注意しないといけないことが2点あると考えます。

 1つ目は、情報システム部門が単独でツールを選定するのではなく事業部門を巻き込むこと。仮にそうできなかった場合でも選定プロセスや理由を事業部門の人にキチンと説明することです。これを怠ると余計な抵抗や反発を生んで結果的には定着しないことになりかねません。

 2つ目は、事業部門に在籍するITリテラシーの高い人に使ってもらうこと。使いこなせる人にまずは使ってもらって、その便利さを実感してもらい、そこから徐々に使える人を増していきます。今なおRPAやAIが自分の仕事を奪うと勘違いしている人は少なくないので、自分の仕事を楽にしてくれる便利なツールであることを理解してもらうのです。

 これらの点に注意して進めていくと、最初に使い出した人が伝道者として活動してくれるので勝手に事業部門に浸透していきます。一方で、いきなり大きな費用をかけて無理に全社展開したり、事業部門に強引に使わせようとすることはやってはいけないと考えます。主体はあくまでも事業部門であることを肝に銘じないと、高い確率で失敗することになると思います。

非常に難しい「攻めのDX」

 次に、攻めのDXについて。簡単に言うと、こちらはデジタルを活用して自社のビジネスモデルを刷新したり、まったく新しい製品やサービスを生み出すことです。これに成功している企業は未だ少数派でしょう。私は、この取り組みがうまく機能しない理由を、以下のようなことをやってしまっているからではないかと見ています。

 1つ目は、目的やゴールを明確にすることなく「とにかくDXをやれ!」とトップ指示を出しているケース。手段も目的も曖昧模糊ですから、いかに優秀な人材を集めても貴重な人材リソースの無駄遣いになります。

 2つ目は、片手間でDXに取り組ませるケース。優秀な人材であればあるほど、自らの立ち位置を正確に把握出来ますので、会社が片手間でDXに取り組ませようとしていると分かれば当然、そこに力を入れません。当然のことながら成果も出ないので、さらに手を抜くという負のスパイラルが回り出します。

 3つ目は、DX推進のために設けた組織だけが必死に取り組み、事業部門などの巻き込みが弱い組織。ビジネスモデルの変革を実行するにはビジネスを理解している人材の関与が不可欠です。情報システムを統括している情報システム部門の人材も、さらに会社全体や経営陣を動かせる経営企画部門の人材も必要です。そういった巻き込みができていない取り組みは、まさしく「机上の空論」となります。

●Next:攻めのDXを実効性のある取り組みにするために

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