SAPジャパンとSkillnoteは2023年7月4日、製造業向けスキル管理システム「Skillnote」を、SAPの業界特化型のクラウドサービス「SAPインダストリー・クラウド・ソリューション」の1つとして、世界各国の製造業を対象に提供開始すると発表した。人材スキルデータをSAP生産系システムに連携させることで、設計・製造工程において人材を最大限に活用できるようにする。
SAPジャパンは、各業界のニーズに特化したアプリケーション群「SAPインダストリー・クラウド・ソリューション」を提供している。これらのアプリケーションは、独SAP/SAPジャパンとパートナー企業が、SAP S/4HANAのアプリケーション開発・実行プラットフォーム「SAP Business Technology Platform(BTP)」を使って構築している。
今回、業種特化型アプリケーションに、製造業向けのスキル管理システム「Skillnote」を追加した。従業員のスキル情報を軸に、教育情報(OJTや講習の計画、履歴)と資格情報を連動させて管理するアプリケーションである。組織的な人材戦略の策定と、個人に最適化した育成計画の立案、進捗管理を実現するとしている。
Skillnoteは、SAP BTPを通じて、製造業向けERP「SAP S/4HANA Manufacturing for Production Engineering and Operations」(SAP PEO)と連携する。
Skillnoteは、単独でのサービス提供やSAP SuccessFactorsをはじめとした人材管理システムとの連携だけでなく、生産管理システムや製造実行システム(MES)、設備機器/IoTなどとの連携による付加価値の向上に注力している。設計から製造までの情報を統合的に管理する製造業向けERPであるSAP PEOとのシステム連携は、こうした取り組みを前進させるとしている。
両社は、SAP PEOとSkillnoteの連携によって得られるメリットをいくつか挙げている。
- 無資格者による作業を防ぎ、品質と安全性を担保する
一定以上のスキル・資格が必要な作業において、SAP PEOによる作業指示の際に、Skillnoteのスキルデータに基づき作業実施可否を判定することで、無資格者による作業を防ぐ。一定水準のスキル保有者が確実に作業を行うことで、品質管理の徹底と、危険をともなう作業の安全性を向上させることが可能 - トレーサビリティの強化
SAP PEOはトレーサビリティを担保する。何を、いつ、どこで、誰が作業したかといった履歴を記録し、データベース化する。この「誰が」に該当する情報にSkillnoteのスキルデータをひもづけることで、作業者のスキルや資格、教育受講履歴などを過去に遡って追跡可能になる。例えば、製品に何らかの問題が発生した際に、作業に関わった時点で、作業者がどのようなスキル、資格を持ち、どのような教育を受けていたかなどを追跡検証することで、的確な改善策を講じることが可能 - 作業時間に応じたスキルの習熟度判定
SAP PEOで管理している従業員個々の作業履歴データをSkillnoteに連携させ、作業時間とスキル習熟度の分析や判定を自動化する機能の提供を両社は検討している。評価精度の向上や、評価管理業務の効率化、配置や育成への活用を想定している
今後、SAPジャパンとSkillnoteは、SAP PEOとSkillnoteの連携強化に加え、SAPが提供しているほかの製造業向けアプリケーションとの連携も進めていく。これにより、設計・製造工程における人材活用を最大化する。