[事例ニュース]

2023年11月15日(水)日川 佳三（IT Leaders編集部）

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　三菱UFJフィナンシャル・グループ（MUFG）は、クラウドファースト戦略の推進を目的に、以前より活用する米Amazon Web Services（AWS）との連携を強化する。AWSと新たに複数年にわたるグローバル契約を締結している。生成AIやマシンラーニング（機械学習）を含むAWSの技術を活用し、顧客により良いサービスを短期間で提供していくとしている。

　MUFGはすでに、AWSの導入により、オンプレミス構成との比較でグループのITインフラコストを20%削減しているほか、クラウドの利点を生かして、顧客向けの新しいサービスを短期間で開発している。

　AWSを活用した顧客向けサービス開発の取り組みの1つに、2021年12月にリリースした資産形成/運用支援プラットフォーム「Money Canvas」がある。単一のモバイルアプリから顧客自身の金融ポートフォリオを構築できる。株式、投資信託、クラウドファンディング、保険、ポイント運用などMUFGおよびパートナー企業の商品・サービスから、顧客が自身に適したサービスを組み合わせられる。現在では250万人超の顧客が利用している。

市場部門がBedrock/SageMakerを活用し業務を自動化

　MUFGは近年、AIの活用を加速させている。API経由で各種の基盤モデルを利用可能な「Amazon Bedrock」、AIモデルの構築/学習/デプロイを行うマネージドサービス「Amazon SageMaker」、事前構築済みのAIを数クリックでデプロイできる「Amazon SageMaker JumpStart」を活用し、社内文書の要約、ドラフトの作成、問い合わせ応答の自動化などのユースケースを検証している。

　MUFGの市場部門を中心に、SageMakerを活用して業務を自動化し、業務量を30％削減している。見込み顧客の抽出や契約文書の分析作業を自動化するAIモデルを、行員による内製開発で短期間で構築するなど、マネージドサービスの利点を生かして、アプリケーション開発のスモールスタートを実現したという。

　現在、AWSの計算資源を活用して、商用利用可能なオープンソースの大規模言語モデル群について精度や性能を測定している。基盤モデル群を特性・用途で使い分けるための知見を蓄積しながら、活用のためのシステム基盤の整備を進めている。市場部門では今後、100を超える潜在的なユースケースに対して、PoCと実装を進めていく予定である。

　MUFGが以前から進めるデータ活用の高度化に関しては、グループ各社から収集したデータ分析環境に、データウェアハウス（DWH）の「Amazon Redshift」を利用している。営業店における業務改善、顧客との対話の強化などの取り組みを進めている。

　例として、従業員エンゲージメントの測定と向上を目的にパルスサーベイシステム（注1）を構築している。サーベイの配信・回答データの集計と回答結果の配信に、BIツールの「Amazon QuickSight」を活用している。従来の方法と比べ、回答集計から結果配信までのリードタイムが4分の1になり、運用コストが約70％減少したという。同システムにより、約3000人のマネジャーが従業員の状態をタイムリーに把握できるようになった。

注1：パルスサーベイ（Pulse Survey）は、従業員に対して短時間で回答できるアンケートを高頻度に実施する意識調査のこと。従業員の意識・意向の変化などを継続的に把握でき、従業員満足度/エンゲージメントの向上に有効とされている