[ユーザー事例]

三方良しで進めた“BaaS元年”を経て、さらなる成長へ─みんなの銀行

2024年8月2日(金)神 幸葉(IT Leaders編集部)

ふくおかフィナンシャルグループ傘下で2020年12月に設立されたインターネット専業銀行、みんなの銀行。2021年5月28日のサービス提供開始から3年間が経過し、すべての取引がスマートフォンで完結するデジタルバンクとして、さらなる成長を目指している。2024年6月7日に開いた説明会では、同行取締役頭取の永吉健一氏がこれまでの軌跡と、注力するBaaS(Banking as a Service)事業をはじめとしたこれからのチャレンジを公にした。

エンジニア/デジタル人材が7割を占める

 2021年5月28日にバンキングサービスを提供開始したみんなの銀行(本社:福岡県福岡市)は、デジタルネイティブ世代を中心に顧客ベースを広げ、3周年となる2024年5月に口座開設数100万を達成した。預金額は同年3月時点で総額256億円という。

 従業員数はサービス開始時の3人から、今では240名を超える。ふくおかフィナンシャルグループ出身の銀行員が3割、エンジニア(データサイエンティスト、マーケター、デザイナーなど)が7割という構成だ。同行の人材戦略について、みんなの銀行 取締役頭取の永吉健一氏(写真1)は、「普通の銀行にはいない職種の人材を多く擁することが、新しいサービスを生み出していく原動力になっている」と説明した。

写真1:みんなの銀行 取締役頭取の永吉健一氏

2023年は三方良しを追求した“BaaS元年”

 みんなの銀行の直近1年間の取り組みとして、永吉氏は手数料無料の個人間送金サービス「ことら送金」のリリース、銀行ローン定額返済機能の追加などを紹介。顧客層のニーズに応えるサービス・機能追加を進めてきたとした。

 そうした取り組みの中で注力する1つが、BaaS(Bank as a Service)事業である。2023年を“BaaS元年”と位置づけて、更新系APIの提供を始めている。提供にあたっては、銀行の多様な機能を顧客がスムーズに利用できるようにするための基盤整備を進め、サービスの提供を通じた価値提供の観点から本期で取り組んだ1年になったという(図1)。

図1:2023年度BaaS事業の取り組み(出典:みんなの銀行)
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 パートナー企業が金融サービス機能を自社チャネルに組み込み、エンドの顧客に提供するBaaS事業。これを進める過程で生じる課題やニーズへの対応について永吉氏は次のように述べた。「こういう機能が欲しい、ここを改善したいといった顧客の声に、多数のエンジニアやデザイナーが柔軟に対応できること。これが我々の強みになっている。顧客の声に迅速に対応しながら、パートナー企業、その先のエンドユーザーと三方良しになる形を目指している」

 BaaS事業のビジネスパートナーは、MOU締結、サービス導入先など計11社を数える(図2)。2024年度は事業を本格化し、エコシステムを広げていく構えだ。

図2:BaaS事業のパートナー一覧(出典:みんなの銀行)
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BaaS事業分野での強みと注力ポイント

 BaaS事業におけるコンペティターとして、金融サービス機能をフルパッケージのアプリとして外部事業者に提供している住信SBIネット銀行のNEO BANK、JR東日本と楽天銀行が共同事業として展開するJRE BANK、法人向けのAPIを充実させるGMOあおぞらネット銀行などがある。みんなの銀行は、APIを個別に提供し、事業者と共同でマーケティングを行う事業モデルの下で差異化を図っている。

 永吉氏は差異化のポイントとして、事業者が金融ライセンスを取得し運用する手間や負担を減らすモデルであること、上述した自行エンジニア陣の内製開発力を挙げた。みんなの銀行のサービスは、デジタルネイティブ世代のニーズに即して構成されているため、事業のデジタル化やスマートフォン対応/マルチチャネルなどに取り組めていない事業者を緊密にサポートできるとした(図3)。

 一方で、永吉氏は提供できるAPIの数が少ないことを弱みとして挙げた。現状では顧客ニーズに合わせたAPIの提供、提供後のユーザーのリクエストへの対応、ユースケースの創出を優先しているが、顧客ニーズに合わせて順次追加開発を進めている。

図3:BaaS事業のポジショニング(出典:みんなの銀行)
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●Next:BaaS事業を加速し、法人向け事業を強化

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