[市場動向]

「見えなかった」世界中のファンの熱量をAIで可視化せよ─「海外SNS×AI」で実現する“顧客の心をつかむ術”

ソニーネットワークコミュニケーションズとMeltwaterが提唱する「ファンマーケティング・ループ」とは?

2026年1月29日(木)森 英信(アンジー 代表取締役)

スポーツ・音楽・アニメなど熱量の高いファンを持つ業界で、ファンをパートナーとして捉え、その声を事業に活かす動きが広がっている。国内の人口減少で新規顧客の獲得が年々困難になる中、海外に活路を見出す動きもある。しかし、中国・韓国などのローカルSNSのデータは取得が難しく、さらに生成AIの検索が普及して、従来の方法では消費者行動を捉えにくくなっている。こうした中、ソニーグループで通信事業を担うソニーネットワークコミュニケーションズ(SNC)と、ソーシャルリスニングツールを提供するMeltwater Japanが新たなマーケティングソリューションを発表した。世界中のSNSやサイト、生成AI検索の傾向などから、これまで「見えなかった」顧客の声をとらえて、AIで消費者のインサイトを抽出・分析。それを効果的な施策につなげる「ファンマーケティング・ループ」を生み出すという。取り組みの詳細を両社のキーパーソンに聞いた。

日本からは見えにくい「海外ファン」という機会損失

 メジャーリーグで活躍する大谷翔平選手の契約総額は10年で7億ドル(約1000億円)。ワールドシリーズでは、選手や関係者に分配される賞金総額が3000〜3500万ドル(約45〜55億円)に上る。

 一方、日本プロ野球(NPB)の最高年俸は数億円、日本シリーズ優勝チームの賞金は1億円前後にとどまる。この大きな差の一因は、市場規模の違いによるものだ。スポーツに限ったことではないが、日本は人口減少に転じており、こうした差はさらに広がっていくことが予想される。

 ソニーネットワークコミュニケーションズ(SNC)法人サービス事業部 サービス企画部 課長の金子直樹氏(写真1)は、「人口が少なくなっていく中で、自社やブランドのファンを育成していくことがより重要になっていきます」と語る。

写真1:ソニーネットワークコミュニケーションズ 法人サービス事業部 サービス企画部 金子直樹氏

 そんな中、スポーツチーム運営やエンターテインメント業界などで、もはや必須の取り組みとなっているのが、特定の対象を熱心に応援するファンやそのコミュニティをとらえる「ファンマーケティング」だ。従来の企業主導型マーケティングは、広告や宣伝といった一方的な情報発信が中心だった。

 しかし、今では企業が発信するメッセージよりも、実際に体験したファンの投稿や口コミの方が信頼され、他者への推奨や共感を生みやすくなっている(図1)。ファンは「消費者」から「共創パートナー」へと変化し、その声を資産として活用する動きが広がっている、と金子氏は指摘する。

図1:マーケティングパラダイムの転換。ファンによる発信は信頼性が高く、資産につながる(出典:ソニーネットワークコミュニケーションズ、Meltwater Japan)
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 特に海外に目を向けると大きな機会が存在する。「アニメ、音楽、映画といったコンテンツ産業の市場規模は、ある統計では4兆円規模に達しています。一方で観光庁の調査によると、訪日外国人のスポーツ観戦やエンタメ体験への参加率は2%程度にとどまっており、まだまだ伸びしろがあります」(金子氏)。

 インバウンド需要を観光や飲食業だけに留めず、スポーツ、エンタメ、各種プロダクトやサービスまで、あらゆる産業が成長の機会とするには、海外からもファンを獲得することが不可欠だ。その要となるのが、世界中の消費者の声をリアルタイムで把握するデータ基盤である。

 しかし、中国のWeibo、WeChat、RED、韓国のカカオトークといったアジアで人気のローカルSNSは、APIの制約やデータガバナンスの問題から、日本企業が単独でアクセスすることは難しい。自社で収集基盤を構築しようとすれば膨大なコストと工数がかかってしまう。

 消費者の行動も変化している。ご存じのように、ChatGPTやGeminiといった生成AIに質問し、その回答を基に意思決定するケースが増えている。

 2001年にノルウェーで創業し、米サンフランシスコを中心にグローバルに拠点を構え、ソーシャルリスニングツールを開発・提供するMeltwater。その日本法人Meltwater Japanで執行役員社長を務める赤田将之氏(写真2)は、「生成AIが購買などの意思決定に影響を与える傾向が強まっています。WebのログやSNS以外にも、大規模言語モデル(LLM)が何を学習し、どう回答しているかを把握することが重要です」と説明する。

写真2:Meltwater Japan 執行役員社長の赤田将之氏

 しかし、金子氏が聞いた顧客の声は切実だ。限られた人員で運営されるマーケティングの現場では、「SNSを運用しているものの、戦略的なデータ分析まで手が回らない」「データ分析が特定の担当者に依存しており、異動や退職によって継続性が失われてしまう」といった声が少なくないという。

 投稿への「反応の質」を深く分析するという発想自体が持てていないケースも多い、と金子氏。「自社アカウントのフォロワー数などは見ているが、競合までは見えていなかったり、ファンからを網羅的に把握する仕組みを持っていないお客様が多いのです」(同氏)。

 こうした課題を解決するため、SNCとMeltwaterは手を組み、互いの強みを生かしたファンエンゲージメント支援の仕組みを研究。その成果を落とし込んだソリューションの提供を開始した。

●Next:「見えなかったファン」をリアルタイムであぶり出し、ファン獲得・育成につなげる「ファンマーケティング・ループ」

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