[技術解説]
「Nehalem─Intel Xeon5500シリーズ」のアーキテクチャと性能から実力を検証
2009年6月12日(金)下野 文久、栗並 賢太郎
「サーバー・プラットフォーム革新のエンジン」と言えるのが、2009年4月に登場したインテルのプロセサ「Xeon5500シリーズ」だ。プロセサ単体での性能向上はもとより、仮想化環境をハードウェアで支援している点も見逃せない。ここではXeon5500シリーズのアーキテクチャの解説と、ベンチマークによる検証結果を報告する。
Xeon5500シリーズを支える5つのテクノロジー
- 下野 文久
- インテル
マーケティング本部 ソフトウェア・エコシステム・マーケティング 統括部長
インテルが2009年4月に発表した「Xeon5500シリーズ」は、主に「高性能化」「仮想化支援」「省電力化」の3つを長所に打ち出している。では具体的に、どんな技術を備えているのか。
注目すべき技術は、(1)QuickPathテクノロジー、(2)バーチャライゼーション・テクノロジー、(3)ターボ・ブースト・テクノロジー、(4)ハイパースレッディング・テクノロジー、(5)インテリジェント・パワー・テクノロジー、の5つである。多くは、既存プロセサに実装済みだが、Xeon5500シリーズでは完成度が高まっているのが特徴だ。以下、各技術を紹介しよう。
(1) メモリーアクセスを高速化、複数の仮想マシン構築を支援
Xeon5500シリーズをプロセサ単体で見たとき、内部構造を以前の「Coreマイクロアーキテクチャ」から「Nehalemアーキテクチャ」に一新。同時にメモリーコントローラをプロセサに内蔵した。これによりメモリーへのアクセス速度を高めた。利用するメモリーの規格も5400シリーズのDDR2から、5500シリーズではより高性能なDDR3に変更した。搭載できる最大メモリー容量も128GBから144GBになり、例えば複数の仮想マシン環境を構築した際でも、メモリー不足による性能劣化を低減できる。
上述した「QuickPathテクノロジー」は、プロセサ同士、およびプロセサとI/Oを制御するコントローラ間の接続機構だ。これまでの「FSB(フロント・サイド・バス)」の帯域幅(最大12.8GB/秒)よりも広帯域(最大25.6GB/秒)であり、メモリー帯域幅の向上と相まって、システム性能の向上に直結する。
(2) 仮想化環境をハードウェアでサポート
ハードウェアレベルで仮想化環境を支援する「バーチャライゼーション・テクノロジー(VT)」を採用した。これまでもVTを採用したプロセサはあったが、5500シリーズでは完成度が高まっている。仮想化環境での性能が向上したほか、VTの付加機能として「VT FlexMigration」を備える。これはXeon 5500シリーズと、異なる世代(旧世代)のXeonプロセサを搭載するサーバーの間で、仮想環境を停止させることなく移行させる、「ライブ・マイグレーション」と呼ばれる機能である。
プロセサのほか、I/Oを制御するチップセット「5520」でも仮想化環境を支援する。仮想マシンに割り当てたI/Oデバイスを管理し、データを高速に転送できるようにするほか、仮想化に伴うI/Oのオーバーヘッドを削減できる。
(3) 一時的に動作周波数を引き上げパフォーマンスアップ
「ターボ・ブースト・テクノロジー」は、必要に応じてプロセサの動作周波数を自動的に高める技術である。一時的にプロセサの負荷が高くなった際、定格の動作周波数以上の高速動作を行わせることによって、処理性能を向上する(図3-1)。この機能が働くのは熱設計電力の範囲内でプロセサが動作している場合だけである。
1プロセサあたり4つのコアを実装するXeon5500シリーズの場合、4コアすべての動作周波数を引き上げられるほか、2コアだけ動作周波数を引き上げ、残りの2コアは定格のまま動作するといった制御を行う。すべてのコアの動作周波数を上げない仕組みを備えることで、省電力化に配慮している。
(4) 1コアあたり2つの処理に対応、レイテンシー削減で性能向上
「ハイパースレッディング・テクノロジー」は、コアごとに複数の処理を可能にする技術である。「Coreマイクロアーキテクチャ」を採用したXeonプロセサには非搭載だったが、Xeon5500シリーズで復活した。1コアあたり2つの処理を行えるので、プロセサでは最大8つの処理を同時に行えることになる。
同時に2つの処理を行えることで、1処理あたりのレイテンシー(遅延時間)を削減でき、業務の生産性を向上できる。なお、ハイパースレッディング・テクノロジーは、対応するアプリケーションでなければ、並列処理による性能向上は見込めないので注意したい。
(5) 稼働状況を監視して省電力化に貢献
消費電力を抑える技術として、「インテリジェント・パワー・テクノロジー」を採用した。4コアのうち、アイドル状態になっているコアの消費電力を限りなくゼロにできる機能を備える。前シリーズではアイドル時の消費電力が16〜50ワットだったが、5500シリーズでは10ワットまで抑えられる。
負荷に基づいて、自動的に処理に必要な最小限の電力になるよう調整する機能もある(図3-2)。電力管理機能を強化し、負荷が低い際には、より低い電力でシステムを稼働するようにした。
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