情報システムやクライアント環境の利用者満足度を毎日、統計的に測定・分析。無駄なIT投資を抑えると共に、社員の生産性向上につなげる--。こんな発想に基づくSaaSが登場した。
仏PROBANCEの日本法人であるプロバンスジャパンが提供する「Everyday Trend Monitor(ETM)」だ。仏PROVANCEのEmmanuel Duhesme社長は、「現在の企業ITは価値を明示することが求められる。しかし稼働率99.995%といった数字は技術マターであり、CEOにとっては価値が感じられない。そこで社員や顧客の満足度調査が必要になる」と、ETMの狙いを強調する。仏自動車メーカーのルノーが、全世界7万人の社員を対象にすでに導入済みという。
顧客や従業員の満足度を把握する場合、半期や年次といった頻度で大規模なアンケート調査を実施するのが一般的。しかし、このやり方では、1)調査間隔が空くので日々の変化を捉えきれず、必ずしも効果的な対策を打てない、2)回収した調査結果のうち重要な 指標が何なのかを検証し切れず、目立つ結果だけへの対応になりがち、3)アンケート調査と結果分析の作業量が一時的に膨大になり、調査担当者の負荷が大きくなる、4)調査結果が調査直前の出来事に左右されやすく、適正な結果を得にくい、といった問題が生じる。
これに対し、ETMでは被調査対象者の中から統計的に有意なサンプルをランダムに抽出し、最大で毎日、違う被調査者に対し調査を実施する。「被調査者は年に2回程度回答すればいいように抽出するので、回答者の負担が少なくて済む。また毎日、調査を実施するので、日々の変化を追っていけるのに加えて、システムダウンなど直前の事象に調査結果が影響される可能性を排除できる」(Duhesme社長)。Webで調査し、回答は自動集計・分析するので、上記3)の問題もない。
ETMでは実際の設問は、IT部門のサービスやクライアント環境、ネットワーク接続性、アプリケーションの使い勝手など5領域、計50を用意する。設問のフレームワークは、運用管理とITサービス管理の標準であるITILに準拠し、「“機器の修理完了までに掛かる時間に満足していますか?”など、すべてそれほど考えずに即答できる。ブレが少なく、信頼性が高い結果が得られる」(同)。この回答結果をETMのバックエンドにある統計分析システムで処理することにより、満足度に重要な影響を及ぼすKPI(キー・パフォーマンス・インジケータ)を推定し、当該システムの担当部署や担当者のデスクトップ画面に分かりやすい形で結果を表示する仕組みだ。
特徴は多言語対応と、バックエンドの統計分析システムの存在。多言語対応では22カ国語に対応しており、言語の違いによる回答のブレをなくす工夫をしているという。また統計分析システムにより、単純に調査結果を集計するのではなく、日々の満足度変化を相対的に捉えることができる。これにより現時点では満足度が想定内に収まっていても、放置すれば満足度が低下するKPIを予測し、アラートを出すようなサービスが可能だ。
仏ルノーのケースでは、全世界100以上の拠点に在籍する7万人の社員から、毎日、約600人を選んで調査を実施。情報システム環境の社員満足度を週次で分析している。「ルノーが全世界に展開している事業所や販売拠点は100を越える。一方、販売や人事、工場など部門によって、ITに対する要求が異なる。こうした部門毎、あるいは拠点毎にKPIを設定し、満足度を算出している」(同)。現時点では主なユーザー企業はフランス企業で、ルノー以外に航空会社のエールフランス、道路工事大手のColasなどがある。
ETMには、調査結果の通知/更新頻度に応じてSurvey+(4半期)、Evolution(月次)、Pilotage(週次)、Performance(日次)の4タイプがあり、利用料金はSurvey+が3年契約場合で年間550万円(調査対象者数1万人)から、Pilotageでは1800万円(同3万人)から。別途、コンサルティング費が必要になる。前記したルノーのケースでは年間2000万円を超える計算だが、「社員1人あたりでは300円程度で、提供価値からすると割安」(同)という。