シトリックス・システムズ・ジャパンは2010年8月24日、都内で記者発表会を開催。来日した米シトリックス・システムズのCEO(最高経営責任者)兼社長のマーク・テンプルトン氏が、インテルが発表したマカフィーの買収による自社、および業界への影響などについて語った。
テンプルトンCEOは、「当社はインテル/マカフィー両社との強い提携関係にある。今回の買収発表は当社の製品開発にとってプラスとなる」と語り、今回の買収を好意的に見ていると表明した。
マカフィーは、シトリックスのサーバー仮想化ソフト「Citrix XenServer」や、クライアント端末のリソースを仮想化するクライアントハイパーバイザ「Citrix XenClient」で利用できる、ハイパーバイザレベルでのウイルス対策機能を備えたセキュリティ管理ソフト「McAfee Management for Optimized Virtual Environments」を開発。シトリックスのデスクトップ仮想化ソフト「XenDesktop」で運用する仮想マシンのセキュリティを、マカフィーのセキュリティポリシー管理ツール「McAfee ePolicy Orchestrator」で一元管理するための技術提携も発表している。
インテルはXenClientの開発で協業している。XenClientは、インテルの仮想化や運用管理支援機能を備えたPCプラットフォーム「vPro テクノロジー」を搭載したPCでのみ稼働する。「インテルのハードウェアと、マカフィーのセキュリティアプリケーション。当社の主要プロダクトである仮想化ソフトは、その両者の変革の影響を受ける。インテルとマカフィーの統合は、当社製品の変革の速度を速めると期待している」(テンプルトン氏)。
一方で、業界への影響については、「明らかに業界地図を塗り替える動きの1つ」(テンプルトン氏)と指摘。「大きなハードウェアベンダーが、大きなセキュリティソフトウェアベンダーを買収するというのは、誰も予測できなかったこと。それ実際に起きるという事実に注目すべきだ」(同)。シトリックス自身が大規模なM&Aに踏み出す可能性については、「あくまで中立性を保ち、買収ではなく多様なベンダーとの協業を進めたほうが、当社の得られるメリットは大きい」と否定した。
日本国内で注目度が高まりつつあるクライアント仮想化についても見解を示した。現在はユーザーごとに用意したサーバー上の仮想PCにクライアント端末から接続して利用するデスクトップ仮想化(VDI)への注目が集まっているが、「実際に利用者が多いのは、マルチユーザーのサーバーOSに同時ログインして利用するプレゼンテーション仮想化だ」(テンプルトン氏)と指摘。「プレゼンテーション仮想化は、当社がXenApp、古くはWinFrameから実現してきており、ユーザーも多い。クライアントハイパーバイザを含めてクライアント仮想化を実現するテクノロジーは多岐にわたり、それぞれに適したユースケースがある。当社製品はそれらをすべてカバーしているのが競合他社に対する強みだ」(同)とアピールした。
国内ではシトリックスのXenDesktopなどを利用し、VDI環境をサービスとして提供するDaaS(デスクトップ・アズ・ア・サービス)が充実しつつあるが、「当面はVDIを社内構築するニーズの方が多いだろう」(テンプルトン氏)と指摘。「DaaSに限らず他のクラウドサービスにも言えることだが、まずプライベートクラウド環境を構築して、クラウドとは何かを理解する。その上で必要な部分はパブリッククラウドサービスを併せて利用するハイブリッド型が中長期的な現実解だと考えている」(同)。